原子力政策の立案を行う内閣府・原子力委員会の小委員会は25日、日本の原発が過酷事故を起こす際のコスト試算を初めて公表、さらに使用済み核燃料を再処理して使う「核燃料サイクル」について7年ぶりにコスト再検討を行った。
福島第1原発事故を参考に損害額を検討した。試算によれば、過酷事故の確率は最大で500年に1回で、1基あたりの標準的な損害額は3兆8878億円になる。
将来の大規模事故の損害に備えるために必要な費用は、従来の発電コスト試算の1キロワット時(kwh)当たり5〜6円に上乗せして、0・1〜1円の上昇(kwh)となる。
出力120万kw級の原発1基を想定し、廃炉費用は約3200億円と推定。避難や風評被害などの損害賠償を加えた。
この試算を基にした事故コストは、事故の発生確率を国際原子力機関(IAEA)の安全目標の「10万年に1回」とした場合は0.0046円、福島第1原発事故を踏まえた「500年に1回」とした場合は1.2円となる。小委員会は中間の0.1~1円が必要な費用として妥当としている。
原子力発電のコストは、上乗せ費用を加えても、1キロワット時5~7円(従来は5~6円)となる。石炭火力の5~7円、石油火力の14~17円、大規模水力の8~13円、太陽光の37~46円と比べて、数字上の試算では電源の中では依然低めだ。
ただし、この試算では森林などの低線量地域の除染や、除染で出た廃棄物の中間貯蔵施設の費用が含まれていない。今後は除染などの費用を含めた数値の見直しを行うとしている。
また使用済み核燃料の処理に伴う費用は、すべてを再利用する「再処理」だと1kwhあたり1・98円、一部を再処理して残りを中間貯蔵する「現状」だと同1・39円、すべて地中に埋める「直接処分」だと同1・00~1・02円と公表した。
原子力政策大綱は、2005年に策定されている。同委では国民の意見や今回の試算をめどに、来年中に新大綱を取りまとめる予定だ。(オルタナ編集部=石井孝明)
原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会(第3回)資料(試算一覧掲載)