岐阜県高山市の工芸村、オークヴィレッジ(稲本正代表)の提案する被災地向け木造住宅「合掌の家」が宮城県気仙沼市に完成した。
増築で仮設住宅から復興住宅へと移り変わり、地元の雇用や木材利用も進められる。
森林資源の見直しから日本の再生を唱える「緑の国」づくりの第一歩だ。
完成したのは縦横約7㍍、高さ約6㍍の三角屋根の家。切り妻部分は大きなガラス面で陽光が明るく差し込む。11畳の食堂兼居間とキッチン、トイレ、浴室を備え、階段を上がると3畳ほどのロフト空間もある。
金物や接着剤などを使わず、伝統的な継ぎ手の技術を応用。そのため一定の技術があれば簡単に組み立てや解体ができる。ただし災害発生直後は材料や人の確保が難しいことから、今回は岐阜県産のスギ100%の部材を持ち込み、同社の職人らが2週間ほどで建てた。
仮設住宅としての利用後は、1階部分を箱状に建て増して合掌部分を2階に上げれば、より居住性の高い「復興住宅」となる。1階部分は地場産材で、地元の大工が建設することが理想だ。
建設地は気仙沼市唐桑地区の漁師、畠山重篤さんの自宅に隣接する林の中。畠山さんの家はやや高台で津波は直撃しなかったが、周囲の集落は壊滅的な被害を受け、港も地盤沈下で復旧のめどが立っていない。
合掌の家は当面、畠山さんが代表を務めるNPO法人「森は海の恋人」の事務所やボランティアらの宿泊所として利用される。
副理事長で畠山さんの三男、信(まこと)さんは「非常にしっかりした造りで地元の大工も感心している。コストが低くなれば集落単位で取り入れることも考えられる」と話す。
課題のコストは、合掌部分だけで500万円以上。コストダウンを進めるには、今回の被災地向けだけでなく、次の災害に備えて各地の自治体などが量産、ストックできるかどうかにもかかっている。
稲本代表は「鉄骨のプレハブ住宅に比べ、木造なら寒さや結露の心配も少ない。スギやヒノキを使わなければ日本の森林が荒れるときに、化石資源の家づくりを進めていてはだめ。日本の一番大切な資源である森を生かすことが本当の新しい国づくりにつながる」と訴えている。(オルタナ編集委員=関口威人)