ドイツの小売店では年間31万トン、12億ユーロ相当(約1236億円)の食品が廃棄されていることが、ドイツ小売研究所の調査で明らかになった。
「食品ロス」は売上高の1.1%にあたり、1店1営業日あたり平均25kgの食品が廃棄されている。
中でもパンの廃棄率が高く、パン販売量全体の17%(製パン10.4%、焼き立てパン平均6.5%)を占め、これに生鮮野菜・果物の同5.1%が続く。
ロス削減のため、各店では安売りやフードバンクへの無料提供などで対応しているが、そのフードバンクも「賞味期限」を過ぎた食品には慎重であるため、やむなくゴミ箱行きになるものが少なくない。
食品ロスを求めて、夜な夜なスーパーのゴミ捨て場に出没するダンプスター・ダイバー(ゴミ箱をあさる人)も都市部で急増、社会問題になりつつある。
しかし家庭での食品ロスは、実は小売店のそれよりさらに深刻だ。食品ラップメーカーCofresco 社の最新調査によると、2010年、ドイツの一般家庭では計660万トンの食品が廃棄された。
消費者1人当たり年間80kg、額にして310ユーロ(約32000円)を捨てていることになる。
このほかレストランや食品メーカーでのロスはほとんど把握されておらず、先頃公開されたドキュメンタリー映画「Taste the Waste」では、食品ロス総計は年間2000万トンとされている。
食品ロスで最大の問題点は、「賞味期限」である。腐敗や損傷でやむなく廃棄されるもの以外に、食品の多くが「賞味期限が切れている」という理由で捨てられている。
「賞味期限」を表すドイツ語「Mindesthaltbarkeitsdatum (MHD)」は、「少なくとも表示期限までは十分おいしく食べられる」という意味だが、実際にはこれを「消費期限」と解釈する消費者がほとんど。結果的にスーパーの店頭や家庭の冷蔵庫から、この日付を過ぎた食品がゴミ箱へと消えていく。
ドイツ政府もゴミ削減の観点からこの点を憂慮しており、連邦議会ではMHDという表記の改正をめぐる議論が始まった。
連邦消費者保護・食糧・農業省のイルゼ・アイクナー大臣は「賞味期限の解釈について国民の理解を高める必要がある」とし、2012年早々にも食品ロスの実態について連邦独自の調査を実施する計画だ。(独デュッセルドルフ=田中聖香)