「原発国民投票」を特集に取り上げた『通販生活 秋冬号』(カタログハウス社発行)のテレビCMをテレビ朝日が放送拒否していた問題で、テレ朝の早河洋社長は29日、定例会見で拒否の事実を認めたうえで、現状の国民投票制度が憲法改正のみを対象にしていることから「原発国民投票という表現は、それがすぐ可能であるような誤解を(視聴者に)与えないか」などと述べた。
同社によると、CMは「報道ステーション」のほかトーク番組「徹子の部屋」でも放送の打診がカタログハウス社からあったが、社内で検討した結果、放送拒否を決定。広告代理店の電通を通じてカタログハウス側に伝えた。
早河社長は「特集自体はいいと思うし、雑誌としては問題ない」としながら、「報道番組のCMは番組内容と混同されないようにする」「社会・公共の問題で意見が対立しているものはできるだけ多くの角度から論じる」といった民放連の放送基準に抵触する恐れがあると指摘。
「原発の賛否両論を毎日のように取り上げる番組の前後でこういうCMが流れるのは違和感がある。(トーク番組でも)国民投票の点からどうだろうかと思う」などと自らの見解を示した。
一方、民放連側は本誌の取材に対し、「民法事業各社は独自で定めた放送基準に従い放送している。民放連が提供するのはそのたたき台となるものに過ぎない。法的な強制力はない」と、テレビ局側に裁量があることを強調。電通も「テレ朝側の決定をカタログハウス側に伝えただけ」としている。
問題を告発したコラムニストの天野祐吉さんは、自身のブログでさらに「(意見広告だから放送を拒否したとして)いままではともかく、いまのように日本中が大ゆれにゆれている時代に、国民のための最も強力なメディアが、そんなノーテンキなことを言っていていいんでしょうか。『原発をどうする?』『国民投票は必要かどうか?』『意見広告のあり方は?』といった問題を、テレビはあくまでもテレビらしく、つまりわかりやすく、そして誤解を恐れずに言えば面白く、とことん議論する場を、たくさん用意してほしい」などと批評している。(オルタナ編集委員=関口威人、オルタナ編集部=赤坂祥彦)