東京電力は11月30日、事故を起こした福島第一原発1号機で溶けた相当な量の核燃料が圧力容器を突き破って格納容器の底に落下し、同容器の内側の底に敷かれたコンクリートを浸食している可能性があることを認めた。もっとも原子炉周辺は放射線量が極めて高く、実際の状況は確認できていない。同社が実施した原子炉内部のシミュレーションの解析から明らかとなった。
■「チャイナ・シンドローム」により近く
今回の解析結果によれば、最も厳しい想定の場合、全ての核燃料が圧力容器から溶け落ち、最大で3千度の高温に達しながら、格納容器底のコンクリートを65センチメートルの深さまで浸食しているという。
従来、東電はメルトダウンを認めてはいたものの、圧力容器の損傷の程度は軽いとの見方に立っていた。しかし実態がもし今回の解析通りとすれば、溶けた核燃料が原子炉の地下にまで達する「チャイナ・シンドローム」により近い状態ということになる。
国と東電がめざす年内の冷温停止の達成基準の一つは、圧力容器下部の温度が100度以下で安定していることだが、肝心の圧力容器内に核燃料がすでにない恐れがある以上、その指標としての重要度は下がる。冷温停止の達成はより困難になった、とみるのが自然だろう。
■安定冷却の見方は崩さず
東電は事故から2か月が経った5月15日にメルトダウン(炉心溶融)を認めたが、当時東電は「圧力容器の破損は限定的で、燃料は安定的に冷やされている」との見解だった。ところが今回の解析では圧力容器から大部分の核燃料が溶け落ちたことになっており、当初の見解の根拠は損なわれた。
にもかかわらず東電は「格納容器内の水位が30~40センチで保たれており、溶けた燃料が水に浸かっている状態」だとして、引き続き安定的に冷やされているとの見方を崩していない。
しかし水位計のデータには信頼性に疑問があるとの指摘がある。また、京都大学原子炉実験所の小出裕章助教は30日、出演したラジオ番組で「格納容器に穴が開いた可能性も否定できない」との見方を示した。
誰も原子炉内部を観察できない以上、より厳しい事態の想定を踏まえた対策も必要だ。(オルタナ編集部=斉藤円華)2011年12月1日