今年8月に成立した自然エネルギー促進法で設置が定められ、自然エネルギーの普及を大きく左右する「調達価格等算定委員会」。しかし政府が提出した5人の人事案は、自然エネルギーの普及に反対、もしくは消極的な人物が過半数を占めていた――。人事案の差し替えを求める国会議員と環境NGOらは5日午後、国会内で記者会見を行った。
■委員の1人は自然エネ導入に明確に反対
「この人事案では、自然エネルギーは促進できないと危惧する」。自民党の河野太郎衆議院議員が気色ばむその中身は、驚くべきものだ。
進藤孝生氏は新日鉄副社長を務め、電力多消費企業の立場から自然エネルギー促進法の導入に一貫して反対した人物で、同法成立の趣旨に全くそぐわない。
また山内隆弘氏、山地憲治氏の2人は自然エネルギー促進法の核心である固定価格買取制度に対して批判を繰り返してきた。この2氏が関わったRPS法(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法)で、日本の自然エネルギーの普及は10年停滞したといわれる「いわくつき」の人物だ。
■政府が3党に人事案を「お伺い」
そもそも「調達価格等算定委員会」は、自然エネルギーの買取価格や買取期間を、従来の経済産業省主導ではなく、中立な視点で決定するための第三者機関として設置されるものだ。背景には、過去のエネルギー政策が原子力重視などに傾斜する一方で自然エネルギーの普及拡大を阻害してきた、という反省がある。
ところが今回、人事案をめぐり経産省資源エネルギー庁は民主・自民・公明の3党に推薦を依頼。3党が水面下で調整して出てきたのが、自然エネ導入反対派が過半数を占める案というわけだ。
経産省がこの挙に及んだのは、国会の承認が必要な人事案を否決されることを恐れたためとみられる。みんなの党の水野賢一参議院議員は「こうした手続を世間では『やらせ』『自作自演』と呼ぶ」と痛烈に批判した。
自然エネルギー促進法は、化石燃料や原子力に依存し、東電原発事故を引き起こした失敗を繰り返すまいという国民の意志が反映されている。「密室談合」で民意を反故にする真似は許されない。(オルタナ編集委員=斉藤円華)2011年12月5日