野田佳彦首相は16日、首相官邸で記者会見し、東京電力福島第1原発の事故をめぐり、原子炉の冷温停止状態の達成を宣言した。ただ、その根拠が不明確だとして、内外のメディアは早期の幕引き宣言に対して批判的に伝えている。
会見に先立ち、政府が同日、首相が本部長を務める原子力災害対策本部を開き、その状態の達成を確認したという。
政府によれば、冷温停止とは「原子炉内の温度が100度未満となる状態」のこととされる。これは政府と東電が作った工程表で原子炉の安定化の節目「ステップ2」の完了目標とされてきた。来年初頭に達成する目標を前倒しした。
しかし、放射線量の多さなどから原子炉の詳細な現状は不明で、「冷温停止」という言葉の与える印象とは裏腹に、事故収束の気配は見えない。
国内メディアでは東京中日新聞が「放射性物質の放出や汚染水の懸念も残り、絶対安全の保証はどこにもない。廃炉までの長き道のりを考えれば、幕引きとはあきれ返る」と社説で表明。ドイツの新聞シュピーゲル(電子版)も「住民にとって意味がない」などと、懐疑的に伝えているほか、欧米のメディアの大半が野田首相の宣言に反発している。(オルタナ編集部=石井孝明)