東京電力福島第1原発事故の原因などを調べてきた政府の「事故調査・検証委員会」(委員長・畑村洋太郎東京大名誉教授)は26日、中間報告書をまとめた。
特に事故直後に東電が冷却に失敗したこと、保安院が能動的に対応して情報を収集・把握するという自覚と問題意識に欠けていたこと、政権内で菅直人首相(当時)が介入し混乱を助長したことなどを指摘した。当事者それぞれが不適切な対応を重ね、事故が深刻化した結果が浮き彫りになった。
■来年夏に最終報告へ
検証委は6月から調査を開始。原因解明に主眼を置いて責任は追及しない方針だった。12月までに今月半ばまでに関係者456人から延べ約900時間聴取した。
時間的な制約で閣僚の聴取は終わっておらず菅前首相ら官邸中枢の具体的な関与などは来年夏の最終報告書に盛り込む。中間報告書は本編507ページと資料編212ページで構成されており、同委員会のホームページで公表して、来年1月末まで意見を募集する。
報告書は一連の事故で、(1)東電の対応(2)政府の対応(3)市民の被ばく防止(4)過酷事故対策--の4点で問題があったとしている。
■東電は冷却対応に不手際
東電の対応では、3つの原子炉の冷却装置の状況把握と操作に不手際があったと分析している。同委員会は1、3号機で「より早い段階で現状を認識し、別の方法で注水に着手していれば炉心損傷の進行を緩和し、放射性物質の放出量は減った可能性がある」と分析。
ただし、最善の対応が実施できても水素爆発が防げたかは判断が難しいと評価した。過酷事故対策では、巨大津波の来襲を予想できたにもかかわらず実施していなかったことから、東電など電力事業者による自主的な運用には限界があるとした。
政府の問題では、首相官邸の地下に官邸対策室が設置されたが、携帯電話が通じない上に菅直人首相(当時)らは官邸5階にいて、情報共有ができず円滑に対応できなかった点を挙げた。
さらに経済産業省の原子力安全・保安院が情報把握に鈍い動きしかしなかったことも問題にした。
このほか、放射性物質の拡散を分析し、被ばく防止に役立てる政府の「緊急時迅速放射能影響予測システム」(SPEEDI)に言及。公表の遅れで被災者の避難に混乱を招いたとしている。(オルタナ編集部=石井孝明)