2012年1月14日、台湾では総統選と同時に国会議員(立法委員)総選挙が行なわれた。
台湾は日本と同様、小選挙区比例代表並立制を採用しており、今回も二大政党である与党国民党と最大野党・民進党との一騎打ちの様相を呈したが、他にもいくつかの少数政党が候補者を連ねた。
そんな中、環境保護と脱原発、社会的公正を一貫して掲げる台湾の緑の党(台湾緑党)は、議席こそ獲得できなかったものの、大健闘した。
4年前(2008年)の総選挙で同党は5万8千票(0.59%)の得票であったが、今回は総得票数を22万9566票(1.74%)と4倍に伸ばし、国内で第5政党勢力の座を確実にした。
台北市第7選挙区(信義区)では、党前代表で中央執行委員兼政策部主任のパン・ハンシェン(潘翰聲)氏(41)が、候補者が擁立できず自由投票となった最大野党の民進党支持者の支持も集め、4万3449票(24%)を獲得したが、第一党を国民党候補者に奪われ、惜しくも次点となった。
台湾緑の党は、とりわけ台湾電力の低レベル放射性廃棄物処理施設のある蘭峡島(Lai Yu Island)では、緑党は35.76%と他党を退け、最高得票を得た。
台湾緑党は、一九九六年に創設され、15年の歴史を持つ台湾唯一の環境保護政党である。同党は国政選挙や首都市議選など、過去の主要選挙に毎回多数の候補者を擁立する一方に最近では国内の環境・人権NGOや関連市民団体との広範なネットワークや協働により、多くの党員や支持者を着実に増やしてきた。
さらに同党はユニークな選挙戦術でも知られる。今回の選挙では太陽光パネルを取り付けた自転車部隊を市中に動員したり、LGBTや少数先住民族の候補者を擁立するなど、党是をアピールする選挙戦を展開した。日本の福島原発事故を受けて、現在6基ある国内の原発からの撤退も政策争点に掲げた。
これまで台湾の少数政党は、日本と同様、高額の選挙供託金没収による財政難に苦しんでいたが、緑の党ではすでに2010年秋の台北市議選で立候補した一部の候補者は2%以上を得票、規定の得票率を突破し、供託金返還に成功した。
ただ政党要件として議席を獲得し、国からの政党助成を得るには、国政選挙(立法委員選挙)で5%の得票ラインを突破することが条件であり、今回同党は惜しくも実現できなかった。
気候変動による洪水問題、高速道路建設による土地開発や、石油プラント建設による海洋汚染および海洋保護種存亡の危機など、台湾でも環境問題は深刻化しつつあり、日本に先んじて、緑の党の躍進がますます期待される。(国際政治ジャーナリスト・今本秀爾)