1月末以来の大寒波により、原発大国フランスは、電力不足に悩まされている。
原発が55基あるフランスでは、電力で暖房している家庭が多く、大寒波により電力が大幅に不足。ドイツから太陽光や風力による自然エネルギーの電力を輸入し、寒さをしのいでいる。
フランスの電力消費はピーク時には最大100ギガワットにのぼる。これは原発80基の発電量を上回る数字で、1時間あたり7000メガワットの輸入が必要となる。フランスの電力市場は1キロワット時あたり34セントと、ドイツ市場のほぼ3倍だ。
ドイツの人口はフランスより1500万人以上多いにもかかわらず、ガスやオイル、コジェネレーションでの暖房が主流のため電力使用は半分ですむ。しかも、太陽光発電により1時間あたり最大で3000メガワットの電力を生み出している。
フォーカスオンラインによると、昨年、ドイツが自国の原発17基のうち8基を停止させた時、フランスは嘲笑したという。ところが現在、ドイツの自然エネルギーを輸入せざるを得なくなり、原発政策を推進するフランス人にとってなんとも皮肉なこととなっている。
すでに2000年に脱原発を決めていたドイツは同年の「再生可能エネルギー法」により、高い固定価格での買い取りを20年にわたって保証。それにより自然エネルギーは飛躍的に増え、昨年は電力消費の17%をまかなった。
ドイツは半年前に再び2022年の脱原発を採択したが、「原子力の安い電力を他国から輸入していては意味がないのではないか」との批判をよく聞く。しかしドイツは電力輸出国であり、輸入よりも輸出量の方が多い。欧州の送電網はつながっているため電気は流入出し、その時々の需要と供給によって互いに調整しあう。
また、2009年には再生可能エネルギー熱法を施行し、新築の住居では熱の一部を再生可能エネルギーでまかなうことが義務化された。このほか、古い建物の断熱工事に補助金を出すなど、電力消費を減らす努力をし、脱原発実現を目指している。ドイツのエネルギー革命は、産業革命に匹敵するという人もいるほどだ。
ノルベルト・レットゲン環境相はハノーバーアルゲマイネ紙で「この寒い季節に、再生可能エネルギーが大いに役立つことが証明された」と、エネルギー革命が成功していることを強調。
その一方で、全国の送電網の監督機関である連邦送電線エージェントは、「これ以上寒くなり、風が吹かず、太陽がでなければどうなるかわからない。自然エネルギーで送電線を安定させるのは、原子力より難しい」と電力供給の見通しは予断を許さないとしている。
(ドイツ・ハノーバー=田口理穂)