「ひとつ、お考えいただきたいのは、この8000ベクレルという水準は国際的には低レベル放射性廃棄物として、厳格に管理されているということです」。13日に徳島県のウェブサイトに掲載された震災がれきの広域処理についての見解が注目を集めている。
■徳島県「県民に説明できない」
政府は現在、東日本大震災で生じたがれきを全国で処分する「広域処理」を呼びかけている。今回の震災では、がれきが東電原発事故で放射性物質に汚染。環境省はがれきに含まれる放射性セシウムが1キログラム当たり8000ベクレル以下の場合は、広域処理が可能だとの基準を示した。
ところが放射性物質の管理は「封じ込め、拡散しない」ことが原則。全国各地で広域処理による放射性物質汚染の拡大を懸念する声が上がっている。
13日に掲載された徳島県の見解は、そうした市民の声を「ただ放射能が怖いという無知から来る身勝手な言い分」だとして、県でも広域処理を受け入れるべきだと訴える60才男性の意見に対して答える内容だ。
県の担当者は15日、「がれきの受け入れをしないわけではない。しかし十分な根拠がないまま8000ベクレルが基準となっているのでは、県として県民に説明できない」と話し、がれきの受け入れには国の丁寧で明確な説明が必要だとの考えを示した。
■環境省「安全性は緩和していない」
環境省廃棄物・リサイクル対策課の担当者は8000ベクレルの基準について「安全性を緩和したものではない。処分方法はIAEA(国際原子力機関)も評価している」と話す。
ところが原子炉等規制法に基づくクリアランス基準では、放射性セシウムが1キログラム当たり100ベクレルを超える廃棄物は低レベル放射性廃棄物として取り扱う決まりだ。
泉田裕彦・新潟県知事は2月19日、「どこに市町村ごとに核廃棄物場を持っている国があるのか。国が環境整備をしないといけない。IAEAの基本原則で言えば、放射性物質は集中管理するべきだ」と国の対応を批判している。
広域処理しなければ被災地の復興が進まないという意見がある一方、「現地で焼却すれば雇用につながる」との意見もある。「広域処理ありき」では、復興はむしろ停滞しないか。(オルタナ編集部=斉藤円華)2012年3月15日