南三陸町自然環境活用センターは、宮城県の志津川湾のそばに建つ。3.11の津波で、走査型電子顕微鏡を含む数千万円相当の研究機材と、蓄積したデータ類を失った。震災後1年を経た3月17日、かつての利用者らが、その発展的な再興を願って集結した。
旧称「志津川ネイチャーセンター」は、1984年築の町営施設。1999年に元筑波大学教授の横浜康継氏が所長に就任して内容を刷新し、2000年からは豊かな自然環境を生かした地域活性化プロジェクトを展開してきた。累計利用者数は12年間で2万3000人を超える。
団体で訪れた子供たちは、シュノーケリングや磯の生物観察などを体験した。高校生は専門家の指導で各種実習を通して海の生態系と生物を深く学んだ。そのほか、海藻で押し花のような作品を作りながら光合成や海洋環境を学ぶ「海藻おしば」を楽しみに、地域の人々も通っていた。
センターには、現役の研究者が常駐していた。志津川湾には、固有種のクチバシカジカや、ダイバーに人気のダンゴウオが生息している。その縁で、魚類学者のさかなクンとテレビ出演した研究員もいた。臨海実験所としても機能していた同施設には多彩な研究者が出入りし、情報交換をしていた。
「震災が奪ったもうひとつの機能『南三陸町自然環境活用センター』を語るフォーラム」は、3月17日に南三陸ホテル観洋で開催され、全国各地から利用者ら約80人が参加した。センターの教育カリキュラム開発に協力していたNPO海の自然史研究所が主催し、南三陸町と南三陸町観光協会が後援した。
フォーラム前半では、スタッフとして常駐していた研究員が、新種発見などの成果を振り返った。利用者側からは、子どもが現役の研究者と接する体験の重みを語る教育者や、生物多様性豊かな三陸に施設を置く必要性を訴える研究者らが登壇した。
フォーラム後半では、より良い再建のために、参加者同士で理想のセンター像を話し合った。そこでは、新しいセンターに、町の主要水産物であるシロサケのふ化場を併設することも検討された。センターの再建は町の復興計画に入っており、これから中身を詰める段階にある。(オルタナ編集部=瀬戸内千代)