「コンプライアンス=法令遵守」という日本語訳に対しては、ずっと違和感を持っていた。
法令を守るのは当たり前だ。個人で「私は法律を守ります」とわざわざ宣言する人はいない。ではなぜ、企業になると、法令遵守をことさら強調しなければならないのだろうか。
ところが最近、新日本監査法人CSR推進部長の大久保和孝さんに頂いた御著書「会社員のためのCSR入門」(共著、第一法規)をめくっていて、なるほどと得心した記述があった。
以下引用)
英語のcomplyは「満たす」の意である。コンプライアンスは社会からの要請に対して、いかに柔軟に、しなやかに調和していくかが問われているのである。
さらに大久保さんはこう続けている。
「企業がどうすれば良いのか」ではなく、
「企業は、いかに社会が求めているものに対応できるか」。
すなわち、CSRとはSocial Issue(社会問題)をBusiness化することである。
ここに、3つの重要なポイントがある。それは
1)コンプライアンスは誤訳である
――だけでなく、
2)コンプライアンスとは、社会のニーズを満たし、社会問題をビジネスを通じて解決するという、「CSRの根幹部分」を指しているということだ。
3)つまり、企業は単独でCSRをおこなうことはできない、常に双方向性が問われる作業なのだ。
この数年、企業のCSR担当者の間では、
「本業を通じたCSR」という言い回しが半ば流行ワードのようになっている。
しかし、この言い方は危険である。本業さえやっていれば、
それがCSRだという誤解を生みかねないからだ。
いかに環境性能に優れている「プリウス」にしても、
高齢者のQOL向上に役立つ「介護ベッド」にしても、
途上国の経済社会の発展に寄与する「通信インフラ」にしても、
それを売ること自体はCSRではない。
なぜなら、CSRとは、企業が単独で行えるものではないからだ。
常に企業が社会のニーズを知り、社会的な課題を解決するために、
地域社会やNPOと協働する形で行う活動こそがCSRなのである。
オルタナが最近まとめたCSRの定義(条件)は次の通りだ。
①社会的課題の解決を目的としていること
②地域社会やNPOなどを巻き込んだ「他者関係型」であること
③中長期的に企業価値やブランド価値を高めること。
この辺りは、3月30日に発行されるオルタナ28号の第一特集
『CSRは21世紀最強の経営戦略』に詳しく書いたので、
興味がある方は参照頂けたら幸いだ。(オルタナ編集長 森 摂)