福島第一原発事故で東京電力がまき散らした放射性物質によって、福島県内からの製材所から発生する樹皮などの木くず約2万トンが行き場を失っている。製材業者などでつくる福島県木材協同組合連合会は東電に受け入れを要請したものの、東電はこれを拒否。同連合会の担当者は4日、「八方ふさがりの状態だ」と苦境を訴えた。
通常、伐採した樹木を製材する過程で発生する樹皮は引き取られ、堆肥や畜舎の床敷きなどに再利用される。ところが東電原発事故にともなう放射性物質の拡散により、林野庁の調査で樹皮からも放射性セシウムを検出。毎月発生する4千トンの樹皮の大半が、引き取り手のないまま仮置き場などに野積みされている。
同連合会はこれらの樹皮を、東電広野火力発電所(福島県広野町)の5号機で燃料として利用するよう求めたが、東電は「5号機は石炭火力。石炭の燃えがら(石炭灰)の全量を石こうに再利用しているため、樹皮などと混ぜて燃やした場合、焼却灰の引き取り先を探すのが困難」(広報部)としてこれを断っている。
しかし同連合会担当者は焼却処理そのものに対しても悲観的だ。「樹皮に含まれる放射性物質はわずかだが、もし東電が受け入れたとしても、今度は(広野火力発電所の)周辺住民が『燃やさないで』と言うのでは。がれきの広域処理もうまく行かない状況では、圧縮など、焼却以外の処分方法を考えるしかない」
環境省は「焼却施設からの排気中に含まれる放射性セシウムは、バグフィルターで99.9%除去できる」と説明する。しかし1月21日付東京新聞は「環境省の説明には実証データがない」と報じた。「バグフィルターによる放射性セシウムの除去率は60%程度」とする市民団体の試算もある。
ちなみに樹皮ではないが、政府はがれきを燃やさずに処理する方法として仙台平野に埋め立てて長さ数十キロの防災林(防潮林)を作る方針で、宮城県の村井嘉浩知事もこれに協力する考えだ。(オルタナ編集部=斉藤円華)2012年4月4日