株価が暴落している東京電力の株主総会が、6月に開催される。市民団体「脱原発・東電株主運動」(以下、同会)は、株を手放さずに脱原発を目指す株主らと共同で、今年も議案提出の準備を進めている。
提案するのは、送電・変電・配電設備などの売却、事故に関わる責任の遂行、安全協定の締結、一部原発の廃炉と代替火力発電の導入、電力源選択制度の導入の5つ。
同会は、1989年の福島第二原発の事故後に東電に対話を拒否された市民が同社株を取得して発足。総会ごとに株主提案を続けてきた。福島第一原発1~3号機が大事故を起こす2年前には、老朽化を理由に、その廃炉を提案していた。
株主提案には3万株が必要だ。会員約400人の同会は、毎年約3000人、昨年と今年は5000人の株主に議案と合意依頼書を送り、共同提案者を募る。例年20万株以上が集まる。
総会に欠席する株主が東電に返信した「議決権行使書」には、東電と株主が提案した各議案への賛否が記されている。同会の有志は、毎年、限られた閲覧期間に東電に通って5000枚入り約50箱の同書類に目を通し、株主提案への賛成者を手書きで控え、翌年の合意依頼書送付リストを作る。
同会事務局の木村結(ゆい)さんは「送付先をしぼるための作業だが、非常に手間だ。ほふり(証券保管振替機構)ができてから合意手順も煩雑になり、集まる株数が半減した。詳しいマニュアルを同封しても、例年2割以上の株主が手続きを間違えてしまう」と、小口株主を集めて共同提案する難しさを語る。
しかも株主提案は、いつも否決されてきた。2011年の総会では、株主提案への賛同に多数の挙手があったが、東電は数えることもせずに否決した。そこで同会は、「東電を無批判に支え続けてきた大口株主」を、いつもの手作業で確認。これまで東電が公表してこなかった約90名を含む上位100社を発表し、脱原発への協力を求める文書を送った。
木村さんは「電気料金値上げに反発して、今まで黙っていた企業経営者も声を上げ始めた。今年こそ多くの株主が動くのではないか」と期待を込める。(オルタナ編集委員=瀬戸内千代)