北ドイツにある核廃棄物の中間処分場「ゴアレーベン」周辺で女児の出生率が有意に下がっているとの調査が明らかになった。放射線値は許容範囲内だが、「低線量でも人体に影響があるのではないか」と議論を呼んでいる。インターネット新聞の「ヴェルト・オンライン」など各紙がこのほど報道した。
ドイツの核廃棄物はフランスのラハークで再処理され、専用容器でドイツのゴアレーベン中間貯蔵所に搬入される。中間貯蔵は1995年から始まり、420個分の容量のうちすでに113個入っている。
ドイツ環境支援協会(DUH)がベルリンのチャリテ病院などの協力で行った調査によると、中間貯蔵が始まった1995年以来、ゴアレーベンの周囲40キロ圏内で明らかに女児の出生比率が低下した。統計的には生まれるべき女児が1000人、生まれていないという。
放射能値は低いが、同病院の人間遺伝学のカール・スペアリング教授によると「父親のX遺伝子が傷つけられたため、女児が生まれにくいのだろう」と話し、核廃棄物と女児の出生率について関連づけている。
この「失われた少女たち」の統計について、母親の年齢や子どもの数などデータが不十分だとの声もあがっている。しかし、ニーダーザクセン州厚生省は2011年9月、中間貯蔵開始以前は女児100人に対して男の子が101人生まれていたが、以後は女児100人に対して男の子が109人との調査を発表しており、女児が減っているのは事実だ。
クリストフ・ツィンク医学博士は、放射能の許容値の算出に問題があるとし「胎児は大人より放射能の影響を受けやすい。チェルノブイリ原発事故発生時の医学的な経験が生かせていない」と批判している。
2007年にドイツ連邦放射線防護庁が発表した調査では、原発の周囲5キロ圏内に住む5歳未満の子どもはガンや白血病の発生率が通常の倍以上との結果が出ており、子どもに対する放射能の害が危惧されている。
上記のスペアリング教授によるとチェルノブイリからちょうど9ヵ月後の1987年1月、ベルリンでダウン症の子どもが通常の3倍以上生まれたという。(ドイツ・ハノーバー=田口理穂)