7月から施行される自然エネルギーの全量固定価格買取制度(全量買取制度)を控え、小水力発電への期待が高まっている。各地では相次いで小水力発電所が稼働を開始し、発電機の新製品も発表。住民が主体となって小水力発電で「電力自給」をめざす動きも始まった。
■小さな水源で発電 新製品も登場
小水力発電は、河川をダムでせき止める大規模水力発電とは異なり、落差と一定の流量があれば、農業用水や沢などの小さな水源で十分発電が可能。投入したエネルギーに対して得られるエネルギーが大きいのも利点だ。環境省の2009年度の推計では、全国の河川などでの導入可能量は最大約1500万キロワット(原発15基分)にも達する。
エンジン発電機・溶接機メーカーのデンヨーは17日、同社初となるマイクロ水力発電装置「MHG-5」を7月1日より発売すると発表した。全量買取制度実施にともなう需要を見越しての市場投入だ。出力は5キロワットで、同社担当者は「他社従来品が1千万円程度するのに対して6百万円(系統接続型)と安価。主に自治体を中心に引き合いがある」と話す。
■地域内連携で実現めざす
小水力発電の導入で特徴的なのは、自治体の中でも水源を持つ集落や自治会などが導入に意欲的なことだ。デンヨーの担当者も「地域単位での導入の検討を、各市町村が支援している場合が多い」と指摘する。
神奈川県相模原市藤野では、市民と地元自治会が連携して民有地の水源を使った小水力発電を実現する取り組みが始まった。自然エネルギーの活用で地域の自立をめざす「藤野電力」では、なるべく費用をかけずに小水力発電を立ち上げ、まずは自治会の集会所の電気をまかなう計画を練っている。
同グループの池辺潤一氏は「藤野には似た条件の場所がいくつもある。集落の電気を自給したり、売電で収益を得たりすることも含めて、どういう形で実現できるか検討したい」と話している。(オルタナ編集部=斉藤円華)2012年5月22日