チェルノブイリの反原発運動をきっかけに法人化した南ドイツにある自然エネルギーの電力会社「シェーナウ」。同社の取り組みを映画化した「シェーナウの想い(Das Schoenauer Gefuehl)」を上映しようという動きが日本で広まっている。「自然エネルギー社会をめざすネットワーク」(佐山摩麗子・及川斉志代表)が日本語字幕を作成し、すでに50カ所以上で上映され、各地で元気を与えている。
南ドイツの黒い森に位置する「シェーナウ電力会社」は、チェルノブイリの反原発運動をきっかけに生まれた市民団体から発展した。「原子力のない社会を自分たちの手で実現しよう」と主婦のウルズラ・スラーデクさんや教師、警察官、会社員など一般市民が、大手電力会社との確執や、市民投票、送電網買取など多くの困難を乗り越え、会社組織を設立。
1997年に自然エネルギーのみの電力供給を開始した。当初はシェーナウ市内1700軒に供給していたが、電力自由化となった現在は、ドイツ全土に13万の顧客を誇る。
同社の取り組みは、2008年にドキュメンタリー映画化された。これに「自然エネルギー社会をめざすネットワーク」が日本語訳を付け、今年1月、横浜で開かれた「脱原発世界会議」で初めて上映し、話題を呼んだ。
多くの人に見てもらいたいという思いから、販売はせず、上映グループにDVDを無償で貸し出している。
代表の一人、佐山さんは「どうやって自然エネルギー社会をつくっていけるのか、映画を通して、多くの人に関心を持ってもらいたい。みんなが集まって、自由に意見を出し合い、知恵を寄せ合って、心をひとつにして、社会について考えていくことが今の日本に必要」と話す。
反原発を前面に出さず、自然エネルギー推進という立場から、原発推進派反対派にかかわらず多くの人に見てもらいたいと考えている。
貸し出しについての問い合わせは日に日に増え、最近は100人規模の上映会も増えてきた。同ネットワークのホームページで上映会の情報が見られるほか、フェイスブック「Cafeシェーナウの想い」でも上映会の様子や参加者の感想が書き込まれており、交流の輪が広がっている。(ドイツ・ハノーバー=田口理穂)