震災がれきを土台の一部として「森の防潮堤」を整備するプロジェクトが宮城県岩沼市で始まり、26日に植樹祭があった。
国が進める広域処理だけでなく、被災地内でがれきを有効利用し、津波にも強い健康な森をつくろうという構想で、岩手県大槌町に続いて2カ所目の試み。
植樹祭には市民ら約1000人が参加、仙台空港の南側に広がる公園の敷地約2000㎡にシラカシやタブノキなどの広葉樹の苗木約6000本を植えた。
森の防潮堤づくりを提唱する横浜国立大学名誉教授の宮脇昭氏も駆け付けて植樹を指導。1時間ほどの作業で南北約300m、高さ3-4mのこんもりとした若芽の森が出現した。
プロジェクトは「宮脇式」の森づくりに賛同し、8年前から地元で植樹活動を続けていた仙台市の輪王寺住職、日置道隆さんらが呼び掛けた。
宮脇さんをはじめとした専門家の協力を得て「いのちを守る森の防潮堤推進東北協議会」を設立、被災地の海岸林を調査したところ、クロマツなどの単一林より、広葉樹の高木や低木が混ざった「多層構造の森」が津波被害をくい止めた事例を確認した。
がれきは無害なものを選別し、土と混ぜ合わせて埋める。土塁状にした丘に、地域の植生に合った広葉樹を適切に植えれば、がれきと土壌の間に根がしっかりと張り、安定した森になるという。
各地で広域処理がれきの受け入れが難航している中で、域内処理とともに環境保全や地域の活性化につながるとして、その効果に注目が集まっている。
今回は岩沼市の震災復興計画「千年希望の丘」プロジェクトの実証実験として、津波で発生したコンクリート片や丸太など計610㎥を建設残土など約3350㎥と合わせて活用。市によると、放射線測定では検出限界以下で、その他の有害物質も問題のないレベルだという。今後、数年かけて有害物質の漏出や沈下の有無、樹木の根付き方などのデータをとり、本格的な防潮堤づくりを検討していく。(オルタナ編集委員=関口威人)