東京電力福島第一原発事故以降、脱原発運動が活発な東京都杉並区内で2日夜、住民らが集会を開き、「原発の再稼働反対」など3項目からなる「脱原発杉並宣言」を採択した。
杉並公会堂で開かれた「住民による『脱原発杉並宣言』集会」(同実行委員会主催)には主催者発表で800人が参加。原発問題を長年取材するジャーナリストの鎌田慧氏が講演し、政府が原発の再稼働へ急ぐ現状を「『電力が不足する』と言ってウソ、カネ、脅迫で進めてきたのが原子力。中世のような『原発絶対体制』で、(原発立地自治体が)原発に依存するモノカルチャー経済をつくってきた」と指摘した。
続いて作家の雨宮処凛氏と、「素人の乱」の松本哉氏が登壇。雨宮氏が「これまでデモをしたり声を上げたりしなかったことが原発体制を補完し、安全神話をがっちり支えてきた。日本全国が『杉並化』したら原発は立たない」と話すと、松本氏は「野田首相と全く違う方向に住民が宣言を出す。権力者にとっては『言うことを聞かない人たちだ』となる」と応じ、「今も原発を『安全だ』という政府は終わっている。こんな世の中で従順に生きていると思われるのが嫌」と語った。
杉並は住民による反核運動の「伝統」がある。1954年、米国が太平洋のビキニ環礁で行った水爆実験で第五福竜丸が被曝した際には、杉並の主婦らが中心となって「水爆禁止署名運動」を立ち上げ、全国に広まった。また、昨年3月の東電原発事故から1か月後の4月10日、松本氏ら「素人の乱」が主催し、高円寺で行った「原発やめろデモ」には1万5千人が参加。現在も全国で行われている「脱原発デモ」の発端となった。
集会は最後に「停止中のすべての原発の再稼働に反対」「原発の新増設を中止し、すべての原発を廃炉にする」「電気に頼りすぎていた生活を見直し、安全な自然エネルギーを中心にした政策に転換することを求める」の3項目からなる「脱原発杉並宣言」を会場の拍手で採択した。(オルタナ編集部=斉藤円華)2012年6月3日