フジテレビの持株会社であるフジ・メディア・ホールディングス(フジHD)の株主総会が6月28日、東京・台場のホテルで開かれ、南直哉・東京電力元社長の監査役再任が決まった。
会社側は「原発報道に関して萎縮している点はない」と強調するものの、大事故を引き起こした企業の元幹部を監査役に据え続ける経営センスが今後、議論を呼びそうだ。
南直哉氏は02年に発覚した柏崎刈羽原発の点検記録改ざん事件がきっかけで東電社長を引責辞任させられた。東電顧問に残留したまま2006年からフジテレビの監査役に就任し、08年からはフジHDの監査役に就任している。
監査役は、会計監査にとどまらず、業務全体を監査する。それだけに「福島原発事故を起こした東電の元社長が監査役にいて、公正な報道はできるのか」との批判は昨年も多くあったが、総会で留任が承認された。
南氏の監査役留任について、フジHDの日枝久会長は発言せず、代わりに太田英昭専務が「引責辞任の経験も含め、経営者としての能力を評価している。失敗のない経営者なんているのか」と開き直った。
同HDの連結対象ではないものの、フジサンケイグループの産経新聞はかねてから原発推進報道を垂れ流している。
野田首相が原発再稼働を決めたことについて6月17日付同紙には「電力供給の正常化に向けた一歩と歓迎したい」などとある。原発推進の立場であれば確かに萎縮する必要もないが…。(横山渉)