編集長コラム) 地域住民を欺いた「関西電力」はCSRも企業倫理も欠如している

関西電力が大飯原発の再稼動後の7月6日、原発3基分もの石油火力発電所を止めた。

「関西電力は、コストのかかる石油火力発電所を数基止めた。当初は今週は2基を止める予定だったが、安定した需給状況を踏まえて徐々に停止数を拡大。6日は6基の石油火力を止めた。6基の発電量は約300万キロワットで、原発3基分に相当する」。(日本経済新聞の7月7日付けウェブサイト記事)

この報道に驚いた国民は少なくなかったはずだ。

そもそも関西電力は「原発を再稼動させないと、停電が多発して、それに対応できない病院では生死に関わる問題が起きる」「停電が多発すると関西から大手企業の工場が海外に逃避する」と説明していた。

再稼動に反対していた橋下徹・大阪市長や嘉田由紀子・滋賀県知事、宝塚市の中川智子市長らも、このような説明を受けて、泣く泣く再稼動の旗を降ろしたことは記憶に新しい。

パナソニックの松下正幸副会長も「昨年並みの節電でも困ると言っているのに、計画停電なんてとんでもない。軽々に計画停電と言うべきではない」と橋下市長や嘉田知事を強く批判していた。

ところが、原発の再稼動直後に、早々と石油火力を止めてしまった。これにより、再稼動は電力の需給対策ではなく、コストが掛かる石油火力を止めたいがためであったことが明らかになった。

百歩譲って、関西電力が再稼動にあたって「石油火力を止めないと収益が悪化するため」ときちんと説明していればまだしも、そうした説明はなかった。わずかに「原発再稼動は需給問題からではない」という発言が記憶に残る程度だ。

こうして結果的に住民や自治体の首長たちを欺いた関西電力は、CSR(企業の社会的責任)の意識や企業倫理が欠如していると言わざるを得ない。

関西電力の八木誠社長には、松下幸之助・松下電器産業創業者が著書「企業の社会的責任とは何か」で書いた次の文章を贈りたい。

「企業は社会の公器である。したがって、企業は社会とともに発展していくのでなければならない。企業自体として、絶えずその業容を伸展させていくことが大切なのはいうまでもないが、それは、ひとりその企業だけが栄えるというのでなく、その活動によって、社会もまた栄えていくということでなくてはならない」

また実際に、自分の会社だけが栄えるということは、一時的にはありえても、そういうものは長続きはしない

セコム創業者の飯田 亮氏も次のように指摘する。

「企業の利潤、商売の利益というものは、社会に対する貢献度によって決まるものであり、その貢献の度合いによって社会は企業に利潤をもたらす。社会に貢献しない企業は、だから利潤は得られないし、得たとしても、又それは何日も続かない。そしてその企業は社会から消え去ることになる

フィリップ・コトラー・ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院教授は「企業の社会的責任(CSR)とは、企業が自主的に、自らの事業活動を通して、または自らの資源を提供することで、地域社会をよりよいものにするために深く関与していくことである」と言及した。――『社会的責任のマーケティング』

「地域社会をよりよいものにするために深く関与」することと、地域社会を欺くことは対極の位置にある。関西電力の経営陣は今からでも遅くないので、是非CSRを改めて実践して欲しい。

そして、CSRで最も大事なのは、さまざまなステークホルダーとの「対話」である。年に1回だけの株主総会だけではなく、地域社会や取引先との対話を始めて

関西電力の八木誠社長
欲しい。以上を切に願う。(オルタナ編集長 森 摂)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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