意見表明9人中6人が「原発推進前提派」―政府のエネルギー問題意見聴取会

聴取会であいさつする枝野経産相

政府が全国11都市で「エネルギー・環境の選択肢に関する意見聴取会」を実施する。その初回が7月14日、さいたま市で開催された。枝野幸男経済産業大臣と約170人の一般参加者らが来場した。

政府は2030年時点のエネルギー・環境に関して、3つのシナリオを示している。聴取会では、原発依存度をゼロ、15%、20~25%にする各案に対して、9人が壇上で意見を述べた。事前に意見表明を希望した一般参加者の中から、各シナリオ3人ずつ抽選で選ばれたという。

「原発ゼロを目標に掲げて、生活や産業のあり方をシフトすべき」という提言から、「家計と雇用を守るためには原発25%でも足りない」という主張まで、多様な意見が並んだ。会場の拍手は、原発を否定する意見の後に大きな音で長く鳴り響いた。

9人のうち女性は2人で、どちらもゼロシナリオを主張した。その1人は、故郷の青森に放射性廃棄物が集中している苦悩を語り、「立地自治体で困るのは仕事。原発関連ではなく再生可能エネルギーで雇用を守ってほしい」と述べた。最後に「ゼロを切望します」と言い切ると、割れるような拍手が起こった。

一方、原発維持・推進派は、「冷静な判断が必要。政府は責任とリアリティーのある決定を」「原発の安全性を高めてほしい」「経済への影響が大事」などと訴えた。これらの意見を聞いた15%シナリオ支持の1人が「コストや国富よりも、人の命が一番大事と感じた」と述べる場面もあった。

枝野大臣は広く意見を取り入れる姿勢を強調し、国民の判断材料になるシミュレーションやデータについては、「もっと提供をお願いしたい」と専門家らに呼び掛けた。

インターネットでも中継されたオープンな聴取会だが、傍聴者にはアンケートが配られるのみで、発言は許されていない。終了直前に立ち上がって再稼働反対を訴えた人には、会場から「がんばれ!」「つまみ出せ!」と両極端なヤジが飛んだ。枝野氏は「この運営ルールも含め、広く皆さんのご意見をいただきたい」と繰り返した。(オルタナ編集委員=瀬戸内千代)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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