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「こんなもの除染じゃねえ。拡散だっ」
福島県飯舘村の村民は憤っていた。6月下旬、飯舘村北部の宮内地区にある村畜産技術センター。原発事故前の特産「飯舘牛」が飼育されていた牛舎に、国の除染モデル事業で発生した大量の草や土などが運び込まれていたのだ。
黒い土のう袋に張り付けられたラベルには「汚染土壌等・長泥地内」の文字も。7月に帰還困難区域として「バリケード封鎖」された長泥地区から、わざわざ10キロも離れた低線量の宮内地区に汚染土が移動されていた。
しかもその扱いはいかにもずさん。牛舎に押し込まれたむき出しの草からは、コンクリート塀をつたって黒々とした水がダラダラと流れ出ていた。線量計を当てると毎時15マイクロシーベルト以上。目を疑うような実態が、住民の通報でようやく明るみに出たのだ。
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怒りと不信が極まる住民に対し、村は除染事業で刈り取った草約240トンを、国がペレット状に加工したり、燃料として使ったりする「減容化実験」のために移動させたと説明。
門馬伸市副村長は「住民の同意を得るべきだった」と陳謝した上で、国に実験の中止を求める考えを示した。草は除染土壌の「仮々置き場」となっている小宮地区の保管場所に再移動することも約束されたが、除染自体が進まぬ上にこうした「拡散」が横行するずさんさをさらけ出した。
「国の除染事業はもう破たんしている」。こう指摘するのは京都精華大学の山田國廣教授だ。山田教授は震災後、福島市や南相馬市で独自の除染に取り組んできた。現在は飯舘に入り、西日本の有志とともに田畑の除染実験を始めている。
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「放射性物質の行き場がない以上、今はその場でできるだけ濃縮するしかない。地表は草の根とともに最小限に削り、堆肥化して体積を減らし、小型焼却炉で燃やす。これを村内各所でおこなって、最終的に出る灰は福島第二原発に持っていくしかない。土壌に残った放射性物質はさまざまな植物を植えて吸収させる。時間はかかるが、将来的に田畑や森林の手入れ、そしてバイオマス発電を事業化して村民の雇用を生み出すことにもつながるだろう」
村人から借りている田畑には、堆肥化するための木製ボックスが並び始めた。体たらくな国、「利権」に群がる無責任な業界にかわって、民間が汗と知恵を絞る現実の光景だ。(オルタナ編集委員=関口威人)