国際的な環境NGO2団体が発表した「海」に関する評価が波紋を呼んでいる。
WWFジャパンは今月20日、一般向けの小冊子「寿司(さかな)ガイド」を発表。マグロやサバなど寿司ネタになりそうな魚介類22種について、海洋資源としての評価を赤から緑へのグラデーションで表現した。
例えば日本近海で捕れる天然のマサバは、定置網漁法では「中」評価である黄色に、一本釣りや巻き網漁法では「高」評価の緑色寄りに位置づけられている。養殖のクロマグロは日本産が「中」、メキシコ・地中海産が「低」評価の赤寄り。そのうえで海洋資源保護のため、買い物や食事の際には「できるだけグリーンのものを選ぼう」と呼び掛けている。
これに対して、三重大学生物資源学部の勝川俊雄准教授は「日本のマサバ資源なんて産卵親魚がほとんどいないのだから、国際的な指標だと『枯渇』以外に評価のしようがない。何で緑なの」「ノルウェーの養殖サーモンよりも日本のクロマグロの巻き網の方が持続的だって。全く意味がわからない」などとネット上で疑問を呈している。
WWFジャパンは取材に対し、「資源量だけを見ると異論があるかもしれないが、漁法や養殖の管理状況を細かく点数化して総合的に評価した。同じ漁法でも魚種によって環境へのインパクトが違い、点数も変えている」と回答。ただし研究論文などからつくった独自基準そのものは公開しておらず、「なぜこの評価なのかという問い合わせは多数いただいており、十分な説明ができるよう内部でも意見をまとめている」と釈明する。
「海洋健全度指数」での日本の評価を示すサイト 一方、環境NGOコンサベーション・インターナショナル(CI)は今月中旬、「世界初」と銘打った「海洋健全度指数」を発表。海産物や海岸保護、「きれいな水」など10項目の評価から171の沿岸諸国をランク付け、日本は総合評価で「11位」とした。
しかしこちらも「放射性物質の扱いはどうなっているのか」などの疑問の声が少なくない。CIジャパンによると、調査は国際比較を重視しており、グローバルなデータのない放射性物質は対象外。今後も反映する予定はないが、「調査目的は人間生活と海のかかわりを目に見える形で表し、海洋政策の決定に生かすこと。この方法論を使って日本が放射能データを反映させた独自の評価をつくることもできる。そうした観点で前向きにとらえてほしい」と訴えている。(オルタナ編集委員=関口威人)