新雑誌発行に向けての決意(2006年7月26日)
NPO法人在外ジャーナリスト協会(Global Press)代表 森 摂
私は経済記者として20年以上取材を続けていますが、いまだに解を見出せない命題があります。それは、「企業とは何のために、誰のために存在しているの か」。会社は株主のものか。あるいは経営者や従業員のものか。この古くて新しい問題に多くの人たちが取り組んでいますが、いまだ明快な答えは見出せていません。
しかし、米カリフォルニア州に本社を置く、あるアウトドア・アパレルメーカーの創業者は、一つの重要な提言をしています。彼とは 何度かインタビューの機会を持ちましたが、彼の言葉には他の経営者とは明らかに一線を画す、独特の価値観がありました。それは、次の一文に集約されます。
企業は株主のものではない。経営者や社員のものでもない。地球のものである。地球や資源がなければどんなビジネスも成立しない。
その会社は売上高の1%を毎年、地球のために寄付をしています。その会社は、世界で初めて、オーガニック綿の製品を発売しました。また、ペットボトルから 再生したフリースを世界で初めて発売したのもこの会社です。この会社は上場しません。上場すると市場から急速な成長を求められ、正しい経営ができなくなるからです。
私は、こんな会社がもっと増えて主流になれば、私たちの社会や経済がさらに良い段階に進めるのではないかとの思いを強くしま した。この会社と同様に、素晴らしいミッション(使命)を持った企業は米国に他にいくつもありますが、実は米国でも決して主流ではなく、むしろウォールストリート的な資本主義経済とは距離を保っています。
私たちは、国を問わずこうした企業やビジネスを、もっと皆さんに知ってもらおうと、来年春をメドに「オルタナ」という雑誌を立ち上げることにしました。「オルタナ」とは alternative の略語で、「もう一つの」「伝統的ではない」という意味です。毎回の巻頭特集は「地球や社会に貢献している」「成長だけのビジネスモデルとは一線を画す」「きちんとしたブランドを築いている」企業を取り上げます。
ビジネスだけではなく、カルチャー、ライフスタイル、社会面的な記事、すべてに「オルタナ」が存在するはずです。私たちユナイテッド・フィーチャー・プレス(現 Global Press)に在籍する国内や世界のジャーナリスト50人は、そんな「オルタナ」的なものを選りすぐって、皆さまにお届けしたいと思います。