水産業界30社の持続可能性ランキング、ニッスイは15位に

記事のポイント


  1. WBAが水産業界における持続可能性のランキングを発表した
  2. 1位はタイ・ユニオン・グループ、日本最上位のニッスイは15位だった
  3. サプライチェーンのIUUリスクを評価しているのは3社のみだった

SDGsの達成に向けて、世界の主要企業を評価・ランク付けする国際NGOワールド・ベンチマーキング・アライアンス(WBA)はこのほど、世界の水産関連企業30社の持続可能性に関するランキング「シーフード・サステイナビリティ・インデックス2023」を発表した。1位はタイ・ユニオン・グループ、日本最上位のニッスイは15位だった。(オルタナ編集部・下村つぐみ)

2021年に比べ、人権デューデリジェンスの実施を開始した企業は30社中、7社に増えたが、大多数の企業はまだ踏み切っていない状態だ

WBAは2019年から世界の水産関連企業の持続可能性を評価し、ランキングを公表している。

「ガバナンスと戦略」「生態系」「社会的責任」「トレーサビリティ(追跡可能性)」の4つテーマで、公開された情報から持続可能性を評価する。

2023年版で対象となったのは、ツナ缶世界最大手メーカーであるタイ・ユニオン・グループや英国の冷凍食品メーカーのノマド・フーズなど30社だ。対象企業30社の総収益は、水産業界の収益の4分の1を占めるという。世界の上位5社は次の通りだ。

サステナX

<「シーフード・サステイナビリティ・インデックス」 上位5社>
1位 タイ・ユニオン・グループ 47.5点
2位 ニューペスカノバ 43.8点
3位 ノマド・フーズ 43.5点
4位 モウイ 43.0点
5位 カーギル 42.0点

1位は、100点中47.5点のタイ・ユニオン・グループだ。同社は、以前からサプライチェーン上の強制労働・児童労働の疑いでNGOから強い批判を受けてきたが、ステークホルダーとの協議を継続し、自社のグローバル・サステナビリティ戦略をもとに、人権問題に取り組んでいる。

同社は、水産物を漁獲時から販売時まで一貫してトラッキングできるトレーサビリティの世界標準であるGDST標準を採用するほか、水産物調達方針やコミットメントを一般に公開するためのプラットフォーム「オーシャン・ディスクロージャー・プロジェクト」に参画している。

オーシャン・ディスクロージャー・プロジェクトの開示内容には、天然・養殖魚の原産地に関する最新情報や種の識別、収穫または養殖の方法、問題の水産物における持続可能性の状況などがあり、多岐にわたった透明性のある開示を行っている点が評価された。

日本企業は、ニッスイやマルハニチロなど7社が対象で、ランキングは次の通りだ。

<「シーフード・サステイナビリティ・インデックス」日本の対象企業7社>
15位 ニッスイ 23.9点
16位 丸紅 22.7点
19位 マルハニチロ 20.0点
21位 三菱商事 16.2点
25位 旭洋 11.1点
26位 横浜冷凍 10.1点
30位 OUGホールディングス 0.0点

日本で最上位となったニッスイは23.9点で、調達などのビジネスパートナーと年1回、「購買取り組みセルフチェックシート」を用いてコミュニケーションを行うなど、ステークホルダーとのコミュニケーション手段や頻度の具体的な開示が評価された。

一方で、サプライチェーン上で乱獲や人権侵害などのIUU(違法・無報告・無規制)リスクを評価しているのが3社のみにとどまったことに対し、WBAは「企業は、IUU漁業の撲滅に依然として傍観者である」と強い言葉で表した。

国連食糧農業機関(FAO)によると、水産資源量の34.2%がすでに乱獲状態であり、15分毎に1人の漁業者が業務中に命を失っているという。

シーフードレガシーは水産業の労働問題の緊急性を受け、今すぐ行動したい企業向けに、人権DDを実行していく上で必要な基礎情報やツールをまとめたガイダンスを発表した。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #ビジネスと人権

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