記事のポイント
- 現在日本では146万人がひきこもり状態にあると推計されている
- ひきこもりに特化した在宅ワーク支援サービスを設立して3年が経った
- 当事者と一般の人たちが交流するイベントをリアルとメタバース会場で開催へ
内閣府の調査(2022年)によると、現在日本では146万人がひきこもり状態にあると推計されている。そうしたなか、Meta Anchor(東京・豊島)は、ひきこもりに特化した在宅ワーク支援サービスを立ち上げた。11月4日には、当事者をはじめ、その家族や支援者、一般の人たちが集う交流イベントをリアルとメタバース会場で開催する。(ライター・遠藤一)

Meta Anchorの山田邦生社長は2020年、ひきこもり当事者を対象にした、在宅ワークを支援するサービス「COMOLY(コモリー)」を立ち上げた。これまでに580件の在宅ワークを請け負ってきたという。
山田社長は、「ひきこもりの人は、IT的な技術を元々持っていたり、職人的な作業が得意だったり、ポテンシャルが凄い。世間も本人も『社会で役に立ってない』と思いがちだが、実はそうじゃないと証明したい」と熱く語る。
11月4日に開くイベント「KOMORIBITO FES 2023」では、遠方の人や家から外に出にくい当事者たちが参加しやすいよう、リアル会場とインターネット上に構築された三次元の仮想空間であるメタバース会場を用意した。
同イベントでは、当事者が作成したアートやデザイン、ゲームなどの作品を展示し、販売するほか、当事者によるバンド演奏や来場者同士でボードゲーム対戦ができる。
ステージでは、当事者Vtuberの「ゾンビのシアンCAT」、完全在宅ワークで世界34ヵ国でミニチュアの手製クラフトワーク作品を販売する「豆本ドールハウス」、障害者eスポーツ「ePARA」のトークライブも行われる。
メタバース会場でも「リアル会場に来るのと同じような経験をしてもらいたい」と、当事者有志たちが作った会場に、アート作品のデジタル展示やステージ上もリアル会場のものを配信し、Vtuberシアンによるイベントを予定しているという。


山田社長は、元々人材紹介の会社に勤めていたが、不適合者をふるいにかける適性検査に疑問を持ち、独立して「より人を活かす」オリジナルの適性検査サービスを開発した。
その後、ひきこもり状態になっていた小学校時代からの友人との再会により、ひきこもりの現状を知ったという。
ひきこもり当事者の「働きたい」というニーズは高い。しかし、障害者手帳をもっていない人や若者でない人は国の支援を受けられない場合が多い。
山田社長は、「支援の枠から外れる人たちに、アプローチしている企業が無い。これを事業にできないか。工夫すれば絶対に面白いことになる」と一念発起し、友人とともに「COMOLY」をリリースした。

山田社長やスタッフが営業し、企業から仕事を取ってくる。「COMOLY」内で登録者のスキルや得意なことをオンラインでヒアリングし、マッチングさせる。現在では様々な商店の公式ウェブページ制作や、看板イラスト、チラシ制作など、多くの実績がある。
山田社長は、「当事者の中には、IT的なスキルを既にある程度持っている人が多く、裁縫やデザイン作成など職人的に黙々と集中する作業が得意な人も多い。時間もたくさんあり、案件によってはコミュニティでの人海戦術も可能だ」とひきこもり当事者の強みを話した。
コミュニティでは、当事者たちがフェスに向け準備を進めており、日夜活発なやり取りが繰り広げられ、まるで「学園祭」のようだという。
山田社長は、「当事者たちの魅力を伝えていくこと、そして彼ら自身が自分の可能性に気づいてもらいたい」と語る。
芸術の秋、「ひきこもりカルチャー」の世界に、足を運んでみるのもいいかもしれない。