記事のポイント
- ナミビア共和国がCO2を排出しない世界初の鉄鋼生産を2024年に開始
- 鉄鋼は化石燃料への依存度が高く、世界全体の排出量の8分の1を占める
- ナミビアはグリーン水素を活用し、24年に年産1.5万トンを目指す
アフリカ・ナミビア共和国が、二酸化炭素を排出しない(ゼロ・エミッション)世界初の鉄鋼生産を2024年にも開始する。鉄鋼の生産は化石燃料への依存度が高く、世界全体の排出量の8分の1を占める。ドイツ政府やドイツ企業の支援の下、グリーン水素を活用し、当初は年産1.5万トンを生産予定だ。(オルタナ編集部・北村佳代子)

ナミビアは、アフリカ大陸の南西部に位置する中所得国だ。西は大西洋に面し、南アフリカ共和国など4か国と国境を接する。同国は1884年から1915年までの間、ドイツが植民地支配した歴史を有する。
ナミビアは、地下資源が豊富だ。2030年までにGHG(温室効果ガス)排出量の91%削減を目標に掲げる。日照時間が長く、太陽光発電に適するほか、風力発電などの再生可能エネルギー資源にも恵まれる。しかし鉄鋼生産に関しては、これまで輸入に依存してきた。
2022年にはグリーン水素生産国を目指し、水素戦略を策定した。クリーンエネルギー技術に必要なグリーン水素や鉱物を供給する協定をEUと締結した最初のアフリカ国家だ。
現地のナミビアン紙は10月19日、ナミビア投資促進開発委員会のナングラ・ウアーンジャCEOが「ナミビアのグリーン水素プロジェクトは、EUとナミビアの関係強化の起爆剤となっている」と語ったことを報じた。
■2024年内に年産1.5万トンの鉄鋼を生産予定
11月6日、ナミビアの首都ウィントフックで、ゼロ・エミッションで鉄鋼を生産する「ハイアイアン・オシヴェラ・プロジェクト」の起工式が開かれた。
本プロジェクトは、ドイツ政府が1300万ユーロ(約21.1億円)を助成する。また、ドイツから、炭素回収スタートアップのCO2GRAB社、熱処理メーカーの子会社TS Elino社、機器製造のLSF社の企業連合が本プロジェクトを監督する。
本プロジェクトでは、50人規模の人員を採用し、2024年内に年産1.5万トンの鉄鋼生産を開始する予定だ。最終的には年間100万トンの鉄鋼生産を目指すという。
本プロジェクトを代表するヨハネス・ミケルス氏は、「グローバルの鉄鋼市場は年間20億トンだ。成長余力は非常に大きい」と意気込む。
■「ナミビアにはグリーン水素製造に理想的な条件が揃う」