記事のポイント
- 11月30日からCOP28がアラブ首長国連邦(UAE)で開幕する
- 前回のCOP27で決まった「ロス&ダメージ」基金について議論する
- 論点は、基金への資金の出し手と受け手をどう区分けするかだ
11月30日からCOP28(国連気候変動枠組条約第28回締約国会議)がアラブ首長国連邦(UAE)で開幕する。COP28では前回のCOP27で決まった「ロス&ダメージ」の新基金について議論する。論点は、基金への資金の出し手と受け手をどう区分けするかだ。(オルタナ編集部・下村 つぐみ)

「ロス&ダメージ」とは、気候変動により避けられない損害の影響を表した言葉だ。干ばつや洪水、海面上昇による土地の消失、豪雨などの災害を指す。
こうした損害の影響を受けるのは、途上国や新興国が多い。これらの国からは、温室効果ガスを経済活動で多く排出してきた先進国に支援を求める声が上がる。
ロス&ダメージについて議論が始まったのは、1991年だ。小さな島で構成された開発途上国が海面上昇による被害への支援を主張したことをきっかけに議論が始まった。
「新資金支援組織」の設立を求める開発途上国と「補償」を問う問題となることを恐れた先進国で意見が割れた。
しかし、2022年にで開催されたCOP27(エジプト)で、ロス&ダメージに対する新基金の設立が決まった。
COP28では、基金の具体的な中身について議論する。資金の出し手と受け手の区分けを行う。国連が定めた気候条約では、1992年にできた基準で先進国と途上国を分類している。
この分類に基づくと、日本と同等またはそれ以上の経済規模を持つ中国や韓国が途上国になる。
欧州連合はCOP27で、「損害基金の対象を脆弱な国々に限る」、「国際航空船舶税や化石燃料税などを活用し、先進国だけではなく中国などの新興国からも資金提供を促す」という主張をした。だが、中国やサウジアラビアから強い反発があった。COP28でも議論が難航することが予想される。