記事のポイント
- 国際自然保護連合(IUCN)が絶滅危惧種レッドリストを更新した
- 世界の淡水魚の4分の1が、絶滅の危機に瀕していることが明らかになった
- 地球温暖化、乱獲、汚染、水位の低下が個体群に影響を与えている
国際自然保護連合(IUCN)は12月11日、絶滅危惧種レッドリストの内容を更新した。今回初めて、淡水魚種に関する包括的評価が完了し、その結果、世界の淡水魚の4分の1近くが絶滅の危機に瀕していることが明らかになった。地球温暖化、乱獲、汚染、水位の低下などが個体群の減少に影響を与えている。(オルタナ編集部・北村佳代子)

IUCNは12月11日、世界の淡水魚種に関する初の包括的評価を完了し、25%(14,898種の評価種のうち3,086種)が絶滅の危機に瀕していると公表した。
「今回のIUCNレッドリストの更新は、気候変動と生物多様性の危機の間に強いつながりがあることを浮き彫りにした。種の減少は、気候変動がもたらす大惨事の一例だ」と、IUCNのグレーテル・アギラ―事務局長はコメントする。
IUCNによると、絶滅危機にある淡水魚種のうち、少なくとも17%が、水位の低下、海面上昇による海水の河川への遡上、季節の変化といった気候変動が要因だった。また、絶滅危機にある淡水魚種の57%は汚染、45%はダムや取水、25%は乱獲、33%は外来種や病気などの脅威を主要因とする。
■アトランティックサーモンも準絶滅危惧種に
例えばアトランティックサーモンは、淡水と海洋の生息地を長距離移動するが、2006年から2020年にかけて世界で個体数が23%減少し、「軽度懸念」から「準絶滅危惧」に引き上げられた。
稚魚の発育、餌へのアクセス、侵略的外来種の生息域拡大など、ライフサイクル全体で気候変動の影響を受けたほか、ダム建設などにより産卵場や餌場へのアクセスが妨げられ、伐採や水質汚染によって稚魚の死亡率も高まったという。
IUCN・SSC淡水魚専門家グループのキャシー・ヒューズ共同グループ長は、「淡水の生態系は、水生生息地の1%しか占めていないのに、世界で知られている魚種の半分以上が淡水魚類だ」と、その多様性を説明する。
「この多様な淡水生態系に依存する何十億の人々、漁業に依存する何百万の人々にとって、多様な種の生態系の回復は不可欠だ。淡水生態系を適切に管理し、水量・水質の維持し、種の減少を食い止めなければならない」(ヒューズ氏)
現在、レッドリストには157,190種が登録され、そのうち44,016種が絶滅危惧種だ。
IUCNは長期にわたる保護プロジェクトによって、シミタールホーン・オリックスとサイガ・アンテロープの2種の哺乳類が絶滅危機から回復した事例も示しており、積極的な保護・保全活動の必要性を強調した。