記事のポイント
- 能登半島地震の原因である断層周辺への連動が未だ懸念されている
- 「正常性バイアス」に囚われない行動計画の作成が必要である
- 気候変動に対しても、人類に危機感の響く指標で行動計画を促すべきだ
能登半島地震を引き起こした断層の周辺の断層への連動が未だ懸念されている。最近話題の『首都防衛』(講談社現代新書)という書籍では、様々に想定されるリスクについて書かれ、その発生確率が年々大きくなる南海トラフ地震、首都直下地震、富士山噴火の連動した歴史から、大連動が発生する危険性を指摘している。(サステナ経営ストラテジスト・松田雅一)

いたずらに危険を煽ることは慎むべきも、自分の周りは大したことにはならないという「正常性バイアス」に囚われず、最悪を想定し最善を尽くす備え(こういう状況が起これば必ずこうするという行動計画)が不可欠だ。
正常性バイアスは、異常なことを正常な範囲のことと捉えてしまうメカニズムで、最近の高齢者避難、避難指示、緊急安全確保という警戒レベルに沿った行動を促す情報は、このバイアスに囚われないための行動計画の一つである。
まずは目の前の自然災害で失われる命をどう守るのか、個人がやるべきことの第一は「自分の命は自分が守る」。そのために、最悪を想定し最善を尽くすように、改めて備えを整えるべきである。
「病的な用心深さと、それ以上の臆病さを持ちあわせている者が生き残れる」と、ゴルゴ13は劇画の世界で言ったそうですが、常にリスクを意識して生き残るゴルゴ13ゆえに、その連載記録はギネス入りしている。
世界でも大地震のほか火山噴火や洪水、干ばつなど、自然災害が多発していますが、気候変動をはじめ、地球の内外を取り巻く環境の変化に起因しているとすれば、地球全体の行動計画が必要かもしれない。
気候変動対策ひとつをとっても、パリ協定で示された世界の平均気温を産業革命以前に比べて1.5度に抑える努力目標では、刻々と変わる地球環境の変化に追いつかず、もっと人類に危機感の響く指標で行動計画を促せないだろうか。
温室効果ガス濃度、海面上昇、海水温度の上昇、海洋酸性化という4つの指標に対して、各々の警戒レベルをもって国際社会が強制的に必ずこうする行動を決めなければ、正常性のバイアスで国も人類も動かない。
侵略や戦闘に気を取られている間に、人類がゆでガエルになって手遅れになる前に、どう対処すべきか、正常性のバイアスに気づき、地球沸騰化へのアクセルをブレーキに意識して踏み換える、暴走しない仕掛けを考えないといけない。
筆者紹介: 松田雅一(まつだ・まさかず)
略歴 静岡大学法学科卒業、東レエンジニアリング株式会社入社、海外関係
会社(韓国)の社長を4年間歴任後、同社取締役、常務取締役を担当。
2020年3月第1回サステナ経営検定1級合格(サステナ経営ストラテジスト)
2022年6月役員退任(専務理事)