米証券取引委員会(SEC)は、上場企業向け気候変動開示規則で最終調整に入った。ロイターなど複数の米メディアは、「最終案では、スコープ3排出量の開示義務化を断念する見通し」と報じた。スコープ3は、企業から見たサプライチェーン全体の排出量を指すが、企業排出量の7-9割を占めるとされ、米SECの決定は、気候変動対策としては逆行することになる。(オルタナ副編集長・北村佳代子)

スコープ3開示断念のニュースは、米ロイターが、2月24日、関係筋からの情報として報じた。スコープ3は、企業のサプライチェーンや顧客による製品の消費によって大気中に放出される温室効果ガス(GHG)排出量を指す。コンサルティング会社のデロイトは、ほとんどの企業にとって、このスコープ3は排出量全体の7割以上を占めるという。
SECは、2022年3月に公開した草案では、スコープ3排出量を開示要件に含めていた。最終案が定まった後、SECでは5人の委員による投票を行う。投票のタイミングは明らかにされておらず、最終草案はさらに修正される可能性もあるという。
ロイターによると、SECの広報担当者は「パブリックコメントに基づいて規則案の調整を検討した」と回答したが、最終案の内容についてのコメントは避けた。
サステナ開示に関しては、EU(欧州連合)が今年から企業サステナビリティ報告指令(CSRD)を施行しており、そこでは対象企業にスコープ3排出量の開示を求めている。
■背後にちらつく、カリフォルニア新法に対する訴訟
一方の米国では2023年10月、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事が、カリフォルニア州で事業を行うすべての企業(非上場企業を含む)に対し、気候関連情報の開示を義務付ける2つの法案に署名し、法制化した。