
企業のCSR戦略開発に20年以上かかわってきた経験から言えるのは、CSRに行き詰まる企業がある、ということだ。CSRの取組みを始めたものの、CSRを重要なビジネス戦略として組織に定着させることが出来ていない企業や、ごく基本的なことすらできていない企業もある。先進的な取り組みを行っていても、CSRを真に戦略化することによる利益を享受できていない企業もある。(CSRアジア会長・リチャード・ウェルフォード、監訳:CSRアジア シニア・プロジェクトマネージャー・高橋佳子)
■組織が陥りやすい10の停滞理由
このようにCSRが停滞する原因は多くあるが、私の経験から、多くの組織のCSRがなぜ途中で先に進まなくなるのか、その理由のトップ10を以下に挙げてみた。
1.CSRを容易に行いたいという願望
残念なことに、CSRにほとんどコストをかけず大きな効果をもたらしたいと考える組織は多い。CSRはブランドや評判を高めるための戦略的投資ではなく経費とみられ、意義のある戦略的な活動をするキャパシティがない。優れたCSRは決して容易ではなく、その運営にはそれなりのリソースが必要だ。
2.計画もキャパシティもない
それが何たるかを誰も理解していないために計画がない。CSRマネジャーの多くは研修を受けたことがなく、CSRを重要だと考え、自ら担当を「かって出た」人々だ。その多くが広報畑出身で、フィランソロピー活動を行っていれば、企業の責任が果たせると考えがちだ。CSRが何たるかを理解していなければ、それを戦略化することは極めて難しい。
3.CSR部門が内向き
CSR部門は社内の優先課題のみに注目し、CSRをブランド力アップの重要な戦略として認識していない。世界の課題解決に取組むチャンスや世界的な視野、果たすべき役割や課題を見失い、安全な社内の取組みに終始してしまうのだ。
4.優先課題の間違い
企業は常に様々な重要な優先課題を抱えている。組織にとってCSRは必要でも、残念なことに、CSRが優先課題のトップになることはない。CSRは誰かが暇な時に対応するようなものとなってしまう。CSRが優先課題となり経営陣のサポートがない限り、戦略化はできない。