記事のポイント
- 映画「オッペンハイマー」が第96回アカデミー賞最優秀作品賞に決まった
- 今年の作品賞のノミネートから、多様性を反映する新基準が適用
- 主役級俳優の一人にマイノリティーを採用することなどを求める
原爆を発明した米物理学者の生涯を描いた映画「オッペンハイマー」が第96回アカデミー賞最優秀作品賞に決まった。3月11日(日本時間)、米ロサンゼルスで授賞式が開かれた。今年の作品賞のノミネートには、作品や制作チームに多様性を反映する新基準が適用されている。(オルタナ副編集長=吉田広子)

アカデミー賞を主催する米映画芸術科学アカデミー(AMPAS)は2020年、DEI(多様性・公平性・包括性)を推進するため、アカデミー賞作品賞の新たな選出基準を発表した。これまで、アカデミー会員は白人が多く、俳優部門の候補者も白人ばかりだったことから、多様性に欠けると批判されていた。
AMPASは、「『リプレゼンテーション』と『インクルージョン(包摂性)』に関する新基準は、映画を観に行く観客の多様性をよりよく反映するために、スクリーンの内外で公平な表現を奨励するように設計された」と説明している。
リプレゼンテーションとは、「代表」「表象」「上演」といった意味を持つ英語だが、映画やテレビ、広告などメディアの表現のなかで、社会の多様性を反映し、マイノリティーも含めて公平に描かれることを目指すことを意味する。
■ 主役級俳優の一人にマイノリティーを
例えば、画面上の表現については、次のうち1つを満たす必要がある。
1)主演俳優または重要な助演俳優の少なくとも1人は、アジア人やヒスパニック、黒人、先住民などの過小評価されているグループ出身である。
2)端役を務める全俳優の少なくとも 30% は、次の過小評価されているグループのうち少なくとも 2つのグループに所属している。
女性/人種または民族グループ/LGBTQ/学習障がいまたは身体障がい、聴覚障がいのある人
3)映画の主なストーリーラインやテーマは、過小評価されているグループを中心にしている。
同様に、制作チームに関しても、多様性の反映を求める。具体的には、監督、キャスティングディレクター、撮影監督、メイクアップアーティストなどのリーダーに、女性やLGBTQ、障がい者といった少数派グループを起用する必要がある。
第96回アカデミー賞最優秀作品賞に選ばれた映画「オッペンハイマー」は、新基準を満たしているとされるが、一部では、白人男性中心の映画だとして、疑問の声も上がっている。