記事のポイント
- フランス政府が社会的責任投資(SRI)ファンド投資対象の新評価基準を施行
- 気候変動問題への対応強化を求める動きを受けて改定
- 3月から石炭、石油、ガスを排除し、環境団体から評価の声があがった
フランス政府は、社会的責任投資(SRI)ファンド投資対象の新評価基準を施行した。気候変動問題への対応強化を求める動きを受けて改定した。石炭、石油、ガスを開発する企業を3月1日から除外した。(オルタナ総研フェロー=室井孝之)

フランスのブリュノ・ル・メール経済・財務・産業およびデジタル主権相は昨年11月、社会的責任投資(SRI)ラベルの認定制度の改正について、気候変動問題への対応を重視する新たな枠組みを発表していた。
SRIラベル改正は、気候変動問題への対応強化を求める動きを受ける改定であり、石炭、石油、ガスを開発する企業を3月1日から除外した。
今回の改定は、EUが定めるサステナブルファイナンス開示規則(SFDR)にも影響を及ぼす可能性がある。
SRIラベル認定制度は2016年に、個人や投資家のESG〔環境・社会・ガバナンス(企業統治)〕に配慮した投資判断を支援するため、経済・財務省(当時)が導入した制度。
約1200 のファンドに採用され、運用資産は7700 億ユーロ(約122兆円)を超えている。
2019年には「企業の成長・変革に関する法」(通称PACTE法)により、2020年1月から税制優遇資産形成口座と年金貯蓄プランの対象商品に、SRIラベル認定を受けた投資ファンドの組み入れを義務付けた。
2021年10月気候変動問題への対応強化を求める動きを受け、基準改正に係わる諮問委員会が設置され、2023年夏に同委員会が新基準書案を提出していた。
気候変動問題への対応を重視しつつ、これまでのESGに係わる基準はファンド運用会社に対して投資による負の影響を抑える保証を義務付けるなど、適用を厳しくするかたちで継続する。
サステナブルファイナンスを推進するフランスの環境団体リクレイム・ファイナンスは、「新基準書では、石油・天然ガス関連事業会社であるフランスのトタルエナジーズ、英国BP、イタリアのENIはSRIファンドの投資対象から除外される。信頼性を追求するSRIラベルにとって大きな前進だ」と評価した。