■ マイクロソフトのNPO支援とは
同社の近未来的な働き方を支えるのは最先端のITだ。特にインターネットさえあればどこからでもアクセスできるクラウドサービス「Office365」の果たす役割は大きい。
日本マイクロソフトの牧野益巳業務執行役員社長室長は、「忙しく各地を飛び回り少人数で大きな課題に取り組んでいるNPOにこそ、ITを活用してほしい。業務効率が向上すれば、疲弊してバーンアウトしてしまう人を減らせるのではないか。効率化で浮いた時間を課題解決のために使っていただきたい」と語る。
確かに、クラウドサービスで最新の資料を一元管理できれば、事務所に戻る頻度が減る。また、地域住民の大切な個人情報もセキュリティ対策済みのクラウドに入れれば、紙の保管から解放されるだろう。しかし、日本の多くのNPOは財政難かつITにも疎い。
CSRとして2003年からNPO支援を展開している日本マイクロソフトは、NPOの業務改善が社会課題の解決を早めると考え、「テックスープジャパン」の寄贈プログラムに参加。大企業も使う本格的なソフトを、NPOには定価の4-10%で提供している。
また、いつまでもファクスしか使えないNPOは、企業や自治体との協働も難しいため、2008年からは自治体と連携してNPO向けの研修も始めた。組織の基盤強化を目的に「見やすいニュースレターを出す」「イベント出欠や参加費を管理する」など実際のシーンに沿って、ITを利用した運営手法を初歩からレクチャーするのが特徴。研修後も補助テキストやビデオを無償で提供する。社員のプロボノによるコンサルタント的な個別支援も展開している。
■ 隣室気分のサテライトオフィス

ダンクソフトは、徳島県の神山町(かみやまちょう)の古民家にサテライトオフィスを開き、徳島市内にも拠点を置いた。県内全域に高速の光通信環境が整備されている徳島県は、クラウドサービスの利用に適している。
山間部のサテライトオフィスには、1、2カ月に1度、東京の社員が1週間ほど訪れる。普段は満員電車で通う社員が、山や清流に囲まれて仕事をする。「徳島に行くと社員の表情が豊かになる。製品のクオリティーにも反映されるはずだ」と星野氏もほほ笑む。
就業中は、Office365のオンライン会議システム「Lync(リンク)」によって、古民家の白壁には東京オフィスが、東京のモニターには徳島側の様子が常時映し出されている。広角カメラと高性能マイクがバーチャルな隣室を演出し、距離を忘れて気軽に会話できる。Office365を使いファイルも瞬時に共有。最先端のITは、過疎地の空き家をオフィスに変え、現地の若者4人の雇用も創出した。