
■ 除染対応への批判を削除
沈黙しない彼の姿勢は、沈黙を好む人々の姿を浮き彫りにする。千葉県立中央博物館で「音の風景」展が開催(12月1日まで)。これは日本サウンドスケープ協会との共催で同協会20周年展も同時開催されたが、ここで永幡さんによる福島サウンドスケープ出品説明文が検閲を受けた。
具体的には、福島大学の学長と執行部の除染対応への批判が削除、書き換えられて展示された。
(検閲前)「原発事故後2週間程で学長が安全宣言を発表したことが象徴するように、執行部が問題を軽視してきたきらいがあり、若者が集まる場にしては、除染作業が後手に回ったきらいがあることは否めません」
(検閲後)「原発事故以降、各地で土壌などに堆積した放射性物質の除去が課題となりましたが、福島大学では、大学構内という若者(影響を受けやすいとされる)が集まる場にしては、除染作業が後手に回ったきらいがあることは否めません」
筆者が博物館に質問したところ、「館の総意」により「特定の者に対する批判と受け取られる可能性のある表現」が「公正を期さなければいけない」公立博物館としてふさわしくなく、削除を決めたとの館長の回答を得た。
館からの削除要請に対し、文を修正したのは協会の20周年記念展実行委員会。館の意向を伝えた鳥越けい子理事長に、永幡さん(協会の常務理事でもある)は抗議しながらも、原文への復元を条件に展示開催のための一時的な修正に同意した、と筆者に語る。
実行委員会から筆者への回答(記名なし)は、永幡さんが(原文に戻さない)修正に同意したと説明。食い違いがある。さらに、削除打診は共同開催者の博物館との交渉の一環で検閲には当たらない。また、説明文は実行委員会制作のためその著作権は永幡さん個人にはない、とした。
本件に対し、永幡さんは著作権の侵害、公権力による言論統制、作品に対する冒涜行為だとホームページで厳しい批判を表明。実行委員会の先の説明は、彼の作品の延長であり一部である説明文の著作権を踏みにじったことを隠蔽する、倫理にもとる行為だ。協会は説明責任を免れない。