記事のポイント
- 軍事クーデターから3年、2月にミャンマー国軍による徴兵制が始まった
- 貧しい人々が兵役を受け入れる一方、国外に出ることを希望する人も
- 徴兵により人々の分断が進む中でも、保健衛生と有機農業の支援を続ける
ご無沙汰しています。ミャンマーで活動する医師の名知仁子です。前回の投稿から、あっという間に1年が経ちました。この2月、ついに徴兵制がついに始まり人々に絶望と分断をもたらしています。私たちはそれでも希望を失わず引き続き現地に留まり、歯磨きやトイレ設置などの保健衛生と、有機野菜栽培のコミュニティガーデンの支援を続けています。 (NPO法人ミャンマー ファミリー・クリニックと菜園の会「MFCG」代表理事・医師・気功師・名知仁子)

■兵隊になれば自国の人々に銃を向けるかもしれない
この4月、私たちが支援のために巡回している村々やMFCGの事務所がある町・ミャウンミャの男性に、履歴書のような書類が配られました。配布したのは村長や区長で、書類は兵隊を選ぶ「赤紙」のようなものと噂されています。
軍事クーデーターでミャンマー国内の情勢が大きく変わってしまったのが2021年2月1日。それから3年を経た今年2月10日、政府は徴兵制の施行を発表しました。兵隊に取られるのは18歳~35歳までの男性だけでなく、18歳〜27歳の女性も対象になります。
人々が不安を募らせる中、友人の親戚に信じられないことが起きました。夜に突然、数人の人が踏み込こんできて、息子さんを連れていってしまったのです。事前に何の連絡もなく、突然のことでどうしようもかったそうです。村の人々は、兵隊に取られたのではないかと、口にしています。
物価高騰で生活が苦しく、家族を養うために兵隊に志願する住民もいます。その場合、志願者には村の各世帯から3万チャット(約1500円)ずつが支払われます。仮に40世帯の村なら、120万チャットを得られます。これはミャンマーの平均年収の半分近くで家族を養うには十分な額ですが、本当に悲しい現実です。
徴兵制を逃れて家族を養うため、国外に働きに出ることを希望する若者も少なくありません。そのせいか、ヤンゴンでは日本語学校が乱立しています。こうして一人ひとりがやむにやまれぬ選択をする中で、人々の絆が切れていくように感じています。
さらに悲劇的なことに、ミャンマーは内戦にあるため兵士として戦う相手は自国の人々。つまり、軍事政府に反対する人たちに武器を向けることになります。本来なら国を守るためのシステムが人々の弾圧に使われるとは、どんなに心が痛むでしょうか。
そのような状況の中でも、MFCGはミャンマーの人たちとともに未来を創るため、10年先を見据えて取り組みを進めていきます。希望と夢をいつまでも失わずに、ミャンマーの人たちが「命と生活」を守ることができるよう、引き続きサポートしていきます。
■ミャンマーのスペシャリティ・コーヒーを販売
日本でできるミャンマー支援の一環として、東部のシャン州で作られたコーヒー豆の販売を始めました。世界のコーヒー豆の5%程度しか受けられないという「スペシャリティ・コーヒー」の認定済みです。

自分たちの地位向上と自立を目指すシャン州の女性グループが生産し、埼玉の障がい者就労支援B型施設がドリップパックに加工し、売り上げの10%がMFCGの医療・菜園・学校の支援に充てられます。下記のいずれかで、ご購入いただけます。