「賢明な政府」の時代(田坂広志)

■オルタナティブの風(31)

近年、人口減少による税収の低下、職員の不足によって、本来、行政が提供すべき公的サービスが、十分に提供できない自治体が増えている。 

こうした時代だからこそ、政府や自治体の行政も、抜本的なパラダイム転換を図るべきであろう。

例えば、英国トニー・ブレア政権の時代、首相のブレーン、アンソニー・ギデンズが、社会民主主義でも新自由主義でもない「第3 の道」(TheThird Way)を提唱し、「公的サービスは、必ずしも『官』が担う必要はない、『民』が担うことでも良い」という思想に基づき、非営利組織(NPO)や市民団体などにその役割を担ってもらう政策を推進した。

実は、その後、世界的潮流となった社会起業家(Social Entrepreneur)や社会的事業(Social Enterprise / SocialBusiness)は、この政策を一つの源流として生まれてきたものであった。

しかし、この政策にも限界があった。それは、政府や自治体が、民間の資金や人材、ノウハウを行政に活用しようとしたにとどまり、歴史を通じて人類社会を陰で支えてきた「目に見えない経済と資本」を積極的に活用しようとしなかったことである。

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21世紀アカデメイア学長、多摩大学大学院名誉教授、田坂塾塾長。81年、東京大学大学院修了。工学博士。87年、米国パテル記念研究所研究員。90年、日本総合研究所の設立に参画。取締役を務める。00年、多摩大学大学院教授に就任。同年シンクタンク・ソフィアバンクを設立。08年、世界経済フォーラム(ダボス会議)のGlobal Agenda Councilメンバーに就任。11年東日本大震災に伴い内閣官房参与を務める。13年、全国から8600名の経営者やリーダーが集まり「7つの知性」を学ぶ場、「田坂塾」を開塾。著書は100冊余。

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