AIリスク予防と安全に向け「国連グローバル原則」

記事のポイント


  1. 国連は「情報の誠実性のための国連グローバル原則」を発表した
  2. 偽情報やヘイトスピーチの拡散から生じる危害を防ぐのが目的だ
  3. AIを安全に開発・利用するための枠組みをつくった

国連は6月24日、「情報の誠実性のための国連グローバル原則」を発表した。偽情報やヘイトスピーチの拡散から生じる危害を防ぐとともに、AIを安全に開発・利用するための枠組みだ。アントニオ・グテーレス国連事務総長は、政府、テクノロジー企業、広告主、広報(PR)業界に対して、責任を負うように要請した。(オルタナ副編集長=吉田広子)

グテーレス国連事務総長は、同原則について、「表現及び意見の自由に対する権利など人権に強く根差した、今後進むべき確かな道を示すもの」と説明した。

「情報の誠実性が侵害されることで、極めて重要な平和維持活動や人道支援活動を含め、国連自身のミッションや活動、優先事項も損なわれている」としている。

世界中の国連職員を対象とした調査によると、回答者の8割が、有害な情報によって自身や自身が奉仕するコミュニティーが危険にさらされていると答えたという。

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主な提案の内容は次のとおり。

・各国政府、テクノロジー企業、広告主、メディアその他のステークホルダーは、いかなる目的であっても、偽情報とヘイトスピーチの利用、支持、または増幅を自粛すべきである。

・各国政府は、情報への迅速なアクセスを提供し、自由で存続可能、かつ独立した、複数のメディアがいる環境を保証し、ジャーナリストや研究者、市民社会に対する強力な保護を確実なものにすべきである。

・テクノロジー企業は、すべての製品の設計において安全性とプライバシーを確保すると共に、オンライン上で標的とされる集団のニーズに特別な注意を払いつつ、国や言語を越えて一貫したポリシーと資源を適用すべきである。これらの企業は、危機対応力を高め、選挙をめぐる情報の誠実性を支援する施策を講じるべきである。

・AIテクノロジーの開発に携わるすべてのステークホルダーは、すべてのAIアプリケーションの設計、展開、利用において確かな安全、安心、責任、倫理と、人権の擁護を保障するために、緊急かつ即時の、包摂的で透明性のある施策を講じるべきである。

・テクノロジー企業は、ビジネスモデルの領域を策定する上で、プログラマティック広告に依存することなく、また、ユーザーの反応を引き出すことを人権よりも優先しないように、また、同様にプライバシーや安全よりも優先しないようにし、ユーザーがオンライン上の体験や個人情報に関してより幅広く選択し、管理できるようにすべきである。

・広告主は、テクノロジー業界に対して、故意でなかったとしても広告予算が偽情報や憎悪の資金源となったり、人権を損なったりすることのないよう、デジタル広告のプロセスの透明性を求めるべきである。

・テクノロジー企業とAI開発者は、意味のある透明性を確保し、ユーザーのプライバシーを尊重しつつ研究者や学術界がデータにアクセスできるようにし、公開性のある独立監査を委託し、産業の説明責任に関する枠組みを共同策定すべきである。

・各国政府、テクノロジー企業、AI開発者、広告主は、子どもたちの保護とエンパワーメントに向けた特別な施策を講じると共に、政府は親や保護者、教育者たちにリソースを提供すべきである。

yoshida

吉田 広子(オルタナ輪番編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。2025年4月から現職。執筆記事一覧

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キーワード: #ビジネスと人権

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