記事のポイント
- 「ネット・ゼロ」の国際標準化に向けた策定作業が始まった
- ネット・ゼロを掲げる企業は増えたが、その定義などは各社で異なる
- 第3者が検証可能にすることで、勝手「ネット・ゼロ」を防ぐ
「ネット・ゼロ」の国際標準化に向けた策定作業が始まった。2050年にネット・ゼロを掲げる企業は増えたが、その定義や行動計画などは各社で異なっていた。第3者組織が検証可能にすることで、勝手「ネット・ゼロ」を防ぐ。(オルタナ副編集長=池田 真隆)
ネット・ゼロを検証可能な国際規格にする策定作業は、6月末から始まった。2025年11月に開くCOP(国連気候変動枠組条約締約国会議)30で発表する予定だ。
この策定作業には、170カ国から数千人の専門家が関わる。開発を主導するのは、1992年に世界で初めて環境マネジメント規格を策定した英国規格協会(BSI)とコロンビアの国家標準化機関であるICONTECだ。
ネット・ゼロの国際規格の基になるのは、COP27(2022年11月)で国連と国際標準化機構(ISO)が発表したISO「ネットゼロ・ガイドライン」だ。同ガイドラインでは「ネットゼロ」関連用語の定義を定めた。ネット・ゼロを掲げる企業にとって、温室効果ガス(GHG)削減計画を立てる際の指針となっている。
国連とISOが手を組み、同ガイドラインを策定した背景には、「ネットゼロ」という用語に不明確な点が多かったからだ。特に「カーボンクレジット」ではダブルカウンティング(二重計上)や不正も横行するとされる。「CCS(二酸化炭素の回収・地下貯蔵)やCCUS(回収・貯蔵・再利用)、DAC(ダイレクト・エアキャプチャリング=大気中からの二酸化炭素回収)などは商用技術が完全に確立していないとして、ネット・ゼロの手法とするか、賛否が分かれていた。
こうしたことを背景に、企業にとって指針となるものを策定した。
このほど始まった、ネット・ゼロの国際規格に向けた動きは、このガイドラインで定めた内容に信頼性を加えるものだ。これまではガイドラインに沿って、自主基準で行動計画を策定していたが、第3者による検証が入ることで、その企業の信頼性が増す。
BSIのスーザン・テイラー・マーティンCEOは、「この規格開発プロセスの立ち上げは、気候変動問題に対する世界的な取り組みにおいて重要だ。世界中の主要産業の脱炭素化が進む一方で、ネットゼロについては不明瞭さがあった。この規格によって、ネットゼロ移行プロセスに明確性や信頼性をもたらす」と話した。