記事のポイント
- 生成AIの投資・開発・利用がグローバルで急増する
- AI利用に伴い、データセンターなどでのエネルギー需要も増大している
- マイクロソフトやグーグルなど米IT大手のGHG排出量は増加を続けている
ChatGPTがリリースされて以来、世界でAI投資・開発・利用が急増している。マイクロソフトやグーグルなど米IT大手は、積極的に気候変動対策を進めるが、2023年のGHG(温室効果ガス)排出量は引き続き増加した。AI利用増に伴うエネルギー需要増が背景にある。生成AIのエネルギー使用量は、従来のソフトウェアに比べて33倍との試算もあり、環境への影響も注目されつつある。(オルタナ副編集長・北村佳代子)

AIが使用する計算能力は、およそ100日ごとに倍増している。世界経済フォーラムは2024年4月、このような試算を発表した。
ゴールドマン・サックスによると、AI搭載のチャットボットへの1回の問い合わせで、旧来のグーグル検索に比べて最大10倍のエネルギーを使用しうるという。
豪シドニー工科大学サステナブル・フューチャー研究所のゴードン・ノーブル・リサーチディレクターは、米コーネル大学の研究内容を引用し、「生成AIシステムがタスク完了までに使用するエネルギーは、おおまかに言うと、従来のソフトウェアに比べて33倍だ」と指摘する。
「この莫大なエネルギー需要は、CO2排出量と水使用量の急増につながる。電力網にさらなるストレスを与えかねない」(ゴードン・ノーブルディレクター)
■米IT大手のGHG排出量は軒並み増加傾向に
マイクロソフト、メタ、グーグルといった米大手IT企業のサステナビリティレポートからも、AI普及に伴う排出量増加の関係がうかがえる。
マイクロソフトは、「ChatGPT」を手がける米新興企業OpenAIに多額の出資をするとともに、独自のWindows用Copilotアプリケーションも提供する。同社の2023年のGHG排出量は1710万トン(CO2相当)と、3年前の2020年から約40%増加した。
この数値は、直接的な排出だけでなく、データセンター稼働時に使用される電力の発電に伴う排出や、同社製品の使用時の排出も含む。
メタ(旧フェイスブック)も、AIに膨大な経営資源を投下している。同社が昨年7月に公開した「サステナビリティレポート2023」によると、同社の2022年のバリューチェーン全体の排出量は840万トンと、2年前の2020年から65%以上増加した。
グーグルの2023年の排出量も、前年から13%、2019年との比較では50%近く、増加した。同社は排出量増加の要因を、「AIの計算能力が高まったことで、エネルギー需要が増加」したと説明する。その上で「AIを拡張・活用で気候変動対策を加速させることは、AIが環境に与える影響に対処することと同様に極めて重要と認識」していると説明する。
■AI利用拡大は、水使用量にも影響が
AIの利用拡大でデータセンターは大量の熱を発生させ、そのサーバーを冷却するために大量の水も消費する。
グーグル、メタなどの米IT企業の多くが拠点を置くカリフォルニア州は、昨今、深刻な干ばつに見舞われており、データセンターによる水使用量は、特に懸念事項となっている。
これを受け、グーグル、アマゾン、メタなどは、2030年までに自社が消費する量以上の水を還元する「ウォーター・ポジティブ」を誓約している。自社が利用する水使用量の削減だけでなく、水再生プロジェクトへの投資などを通じて、水資源の枯渇する地域への補給・回復を図っている。
生成AIの活用が進む中、データセンターでのエネルギーや水の使用量の動向についても、今後はさらに注視していく必要がある。