サントリー、「運送リスク」を異業種連携で打開へ

記事のポイント


  1. サントリーは「物流2024年問題」への対応として、異業種との連携を強化する
  2. ダイキン工業や大王製紙グループ、ユニ・チャームなどと手を組む
  3. 法改正で、物流企業だけでなく荷主にも効率化の取り組みを課すようになった

サントリーホールディングスは「物流2024年問題」への対応として、異業種との連携を強化する。ダイキン工業や大王製紙グループ、ユニ・チャームなどと手を組み、トラックドライバーの労働環境の改善と輸送に伴う温室効果ガスの削減を狙った。物流問題については、法改正によって、物流企業だけでなく荷主企業にも効率化の取り組みを課すようになった。(オルタナ副編集長=池田 真隆)

「このままドライバーの減少が進むと、商品が届かない事態に陥る」。サントリーホールディングスの塚田哲也・サプライチェーン本部調達本部物流調達部部長は危機感を示した。

酒類・清涼飲料を含む「食料工業品」の国内輸送量は「機械」に次ぐ。同社では、年に約6億ケースを販売しており、酒類・飲料メーカーの中では国内最大規模の物流量だ。

塚田部長は、「日本でトップクラスの荷主として、物流の2040年問題をバリューチェーン全体の課題として捉えている」と話す。

物流問題については、行政は、物流企業だけでなく、荷主企業にも対応を求めだした。今年2月には、荷主企業に対して、トラックの滞留時間を短縮する計画作成を義務付ける法改正を閣議決定した。

ダイキン工業と「往復輸送」始める

サントリーグループでは、異業種連携で運送リスクの解決に挑む。7月から、ダイキン工業と組んで、「ダブル連結トラック」を活用した「往復輸送」を始めた。

トラックの後ろにトレーラーを連結した「ダブル連結トラック」

往復輸送とは、関東から関西へはサントリーグループの飲料製品を、関西から関東へはダイキン工業の空調製品を運ぶ輸送を指す。トラックの片道運行を防いだ。

トラックの一部は、輸送効率の高い「ダブル連結トラック」に切り替えた。これにより10tトラック2台分の貨物を1人のドライバーで輸送できるようになった。

ダブル連結トラックを使うことで、10tトラック2台での輸送と比べて、温室効果ガスの排出量を約35%削減できる見込みだ。

ドライバーの拘束時間も大幅に減らした。1人のドライバーが関東・関西間の全行程を輸送すると1泊2日の拘束だった。この取り組みでは、中継地点を設け、ドライバーが交代できるようにした。こうすることで、日帰り運行を可能にした。

ダイキン工業と連携できたのは、両社の拠点や運行時間、運行頻度などの条件が合致したことが大きい。

サントリーグループは、共同配送やDX化を進め、現場作業の効率化を図ってきた。ユニ・チャームや大王製紙グループなど異業種との連携も積極的に行う。

塚田部長は、「同業他社・他業界・他業種など、あらゆる事業者との連携を模索して、ドライバーの就労環境の改善と製品の安定供給に取り組む」と力を込めた。

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナ輪番編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナ輪番編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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キーワード: #脱炭素

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