日産・田川専務CSO、「サステナ/ESGは競うものではない」

記事のポイント


  1. 日産自動車はこのほど、サステナビリティ戦略に関する記者会見を開いた
  2. 田川・専務CSOは、「サステナビリティは企業間で競うものではない」と指摘
  3. 外部不経済を取り込み、ビジネスを再構築する狙いを語った

日産自動車はこのほど、サステナビリティ戦略に関する記者会見を開いた。会見に登壇した田川丈二・専務CSO(チーフ・サステナビリティ・オフィサー)は、「サステナビリティは企業間で競うものではない」と言い切った。ESG領域の活動に取り組むことで、自社ブランドの競争優位性を高めることはあるとしましたが、「それでも一人勝ちの戦略では、社会問題は解決しない」と語った。(オルタナ副編集長=池田 真隆)

日産の田川専務CSOは、外部不経済を取り組みビジネスを再構築する狙いを語った

日産自動車は7月31日、同社初となる「統合報告書」を発行した。同社は2026年度までに電動化に向け、2兆円の投資を行う。地域ごとに販売戦略を最適化し、販売台数増とEVへの移行を加速する。

統合報告書では、その経営戦略に関連したサステナビリティの考え方をまとめた。重要なのが、マテリアリティ(重要課題)をどのように企業価値の向上に結び付けるかだ。

同社は、マテリアリティ(重要課題)については、ダブルマテリアリティの考え方で特定した。ダブルマテリアリティとは、社会・環境の変化が自社に与える「財務的影響」に加えて、自社の企業活動が社会・環境に与える影響も重視した考え方だ。ダブルマテリアリティの開示はEUが先行する。

これまで投資家は、投資リターンを求めるため財務的影響への関心が高かった。だが、ESG投資の盛り上がりとともに、リターンだけでなく企業の社会・環境への影響にも関心を持つようになった。

日産自動車がダブルマテリアリティの考えで特定した重要課題の中で、最も重要視した課題は5つある。「ガバナンス・コンプライアンス」「人権」「包括性」「再エネ」「電動化」だ。

青色背景の箇所を「最重要項目」と位置付けた

コンプライアンス改革、声上げられる風土に

特にガバナンスとコンプライアンスの領域に関しては、改善に注力する。同社は、前会長カルロス・ゴーン氏の役員報酬の過少記載事件(2018年)を受け、「ガバナンス不全」からの脱却を掲げた。

2019年6月には、指名委員会等設置会社に移行し、「執行」と「監督」の分離を明確にした。2020年度に立ち上げた事業構造改革「Nissan NEXT」でも、コーポレートガバナンスの強化を最重要課題の一つに位置付けた。現在の同社の取締役は、12人のうち8人が独立性を有する社外取締役だ。

取締役会議長と各委員会の委員長はすべて「独立社外取締役」が務める

意思決定プロセスの透明化に取り組んできたが、今年3月には、公正取引委員会から「下請法違反」の勧告を受けた。

統合報告書の発表に関する会見に登壇した、田川丈二・専務CSOは、「コンプライアンスの問題を引き起こさないように、従業員であれ、取引先であれ、声を上げられる風土になることが重要だと認識している」と話した。

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M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナ輪番編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナ輪番編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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