スズメやホトトギス、ノウサギが減少の危機: 環境省が警鐘

記事のポイント


  1. 国連生物多様性条約締約国会議(COP16)が来週21日、コロンビアで開幕する
  2. それに先立ち、環境省やWWFは生物多様性の危機を示す報告書を相次いで発表した
  3. 環境省は、日本のチョウ類や鳥類などが急減していることを明らかにした

国連生物多様性条約第16回締約国会議(COP16)が10月21日、コロンビアのカリで開幕する。COP16に先立ち、環境省や国際NGOのWWFなどは、生物多様性の危機を示す報告書を相次いで発表した。環境省は、日本の里地里山でチョウ類や鳥類、ホタル類などが急激に減少していることを明らかにした。(オルタナ編集部=松田 大輔)

■「普通種」のチョウや鳥が減少傾向に

約5700人の市民調査員が協力し、日本の生態系を長期的・定量的にモニタリングした
約5700人の市民調査員が主体となり、
日本の生態系を長期的・定量的にモニタリングした

環境省と日本自然保護協会は1日、日本に生息するチョウ類や鳥類、ホタル類などが減少していることを明らかにした。2005~2022年度の間、全国約325カ所の里地里山から得たデータを報告書にまとめた。

103種のチョウ類を調べたところ、約3分の1にあたる34種で1年あたりの減少率が3.7~22%となり、環境省の絶滅危惧種の認定基準である減少率3.5%を上回った。オオムラサキ(‐10.4%)やイチモンジセセリ(‐6.9%)など、身近なチョウも多数含まれていた。

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鳥類では、106種を調査した。そのうち、約15%の16種で大きな減少が見られた。スズメは3.6%、オナガは14.1%減少していた。このほかセグロセキレイ(‐8.6%)やホトトギス(‐4.4%)など、なじみのある「普通種」が減っていた。

特に農地や草原、湿地など、開けた環境に生息する種の減少が顕著だった。温暖化により生息に適した土地が少なくなったことをはじめ、人が入らなくなって里山が荒廃したり、農薬の散布が生息地を荒らしたりしている影響が大きいと指摘されている。

一方で、二ホンジカの増加率は20.1%だった。狩猟者の減少やニホンオオカミの絶滅などが影響したと考えられている。ニホンジカが植物を食べつくすことでも、チョウ類や鳥類の減少につながると危惧されている。

このほか、水辺に住むホタル類(‐1.5~‐5.7%)やアカガエル類(‐1.0~‐2.8%)、草原に住むノウサギ(‐4.7%)などの減少も目立った。

■過去50年間で、生物多様性の豊かさが73%低下

WWFは、「後戻りできない危険な転換点」(ティッピング・ポイント)が近づいていると警告する
WWFは、「後戻りできない危険な転換点」(ティッピング・ポイント)が近づいていると警告する

国際NGOの世界自然保護基金(WWF)も10日、「生きている地球レポート」の2024年版を発表した。

同レポートでWWFは、1970年から2020年までの50年間で、生物多様性の豊かさを表す「生きている地球指数」(LPI)が73%低下したことを明らかにした。

LPIは、哺乳類や魚類、鳥類など計5,495種のうち、約3万5千の個体群を分析して算出した。生息密度や群れの規模、巣の数、個体数の変化などを観測し、「ロンドン動物学協会」(ZSL)がまとめた。

1970年時点に比べ、特に河川や湖沼、湿地など淡水域での減少率が85%と顕著だった。陸域は69%、海域は56%ほど指数が低下した。地域別では、中南米・カリブ海が95%と最も多く、アフリカは76%、日本を含むアジア太平洋地域は60%の減少率だった。

米イエール大学で生物多様性の変化を研究するウォルター・ジェッツ教授は、米ニューヨークタイムズの取材に対し、「特に注意が必要な個体群を特定するうえで、このデータは貴重な貢献をしている。種の個体数が憂慮すべきスピードで減少していることは間違いない」と語った。

■COP16では、各国の取り組み状況が問われる

国連生物多様性条約第16回締約国会議(COP16)が21日、コロンビアのカリで始まる。

前回のCOP15では2022年12月、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択され、ターゲットの一つとして「30 by 30」(サーティ・バイ・サーティ)が掲げられた。「30 by 30」とは、生物多様性の保全や回復のために、2030年までに陸と海の30%以上を保全しようとする国際目標だ。

今回のCOP16では、「30 by 30」など国際目標の達成に向け、各国の取り組み状況が問われることになる。

COP16を来週21日に控えるなか、環境省やWWFによる最新データの公表が相次いだことで、自然保護の取り組みの遅れに警鐘を鳴らすかたちとなった。

matsuda daisuke

松田 大輔(オルタナ編集部)

中央大学総合政策学部卒業。2021年から米国サンフランシスコで研究資料の営業マネジャーとして勤務。2024年に株式会社オルタナ入社。

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キーワード: #生物多様性

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