キットカット「1日2枚まで」推奨、適量の「楽しみ」伝える

記事のポイント


  1. ネスレ日本は「キットカット」の適切な摂取量をパッケージで伝える
  2. 1枚分のエネルギー(熱量)と「1日2枚までを推奨」という文言を加えた
  3. コミュニケーションを通してバランスのよい食生活を後押しする

ネスレ日本はこのほど、主力製品である「キットカット」のパッケージに「1日2枚までを推奨」という文言を加えた。キットカット1枚分の摂取カロリーも記載し、バランスの良い食生活を送るための適切な摂取量を促す。個包装単位でエネルギー(熱量)を表示した菓子は少ない。(オルタナ副編集長=池田 真隆)

キットカット大袋の表面には、1枚分のエネルギー(熱量)を表示した

ネスレは1866年の創業以来、社会課題の解決につながる事業を展開してきた。創業者のアンリ・ネスレは、栄養不足による乳幼児の死亡率の高さを問題視し、乳児用の乳製品を開発した。2006年には、当時のピーター・ブラベックCEOがCSV(共通価値の創造)を提唱した。

同社の主力製品であるキットカットについては、2019年にプラスチックから紙製パッケージに切り替え、海洋プラスチックごみ問題に取り組んできた。

2022年からは資源循環にも力を入れた。キットカットをはじめとした紙製パッケージを回収し、紙糸をつくり、伝統技術で水引や手ぬぐいなどにアップサイクルした。

製品そのもので社会課題の解決に取り組んできたが、今回、同社はバランスのよい食生活を送る上で菓子の役割に着目した。

参考にしたのは、厚生労働省と農林水産省が策定した、「食事バランスガイド」だ。同ガイドはバランスのよい食生活を送るための指針だが、その中で、菓子と嗜好飲料を楽しく適度に摂取することを勧めた。主食や副菜、主菜などを摂取する望ましい食生活を送るための潤滑油として、菓子があるとした。

バランスのよい食生活を実践するための指針を「駒」をイメージしてまとめた。菓子と嗜好飲料はその駒を回すための紐として描いた。出典:厚労省・農水省

そこで、同社はバランスのよい食生活を送る上で、菓子は時折の贅沢になり、気持ちも満たすのではないかと考えた。

適切な摂取量を分かりやすく伝えるため、キットカットの大袋のパッケージ表面に1枚分のエネルギー(熱量)をアイコンで表示した。裏面には、バランスのよい食生活を送るため、「1日2枚まで」を推奨した。

新パッケージへの切り替えは順次行い、2026年までに対象となる「キットカット」全製品への切り替えが完了する予定だ。

栄養・健康・ウェルネスの取り組みを通して、「信頼」築く

ネスレの「健康」への取り組みは、中長期的なグローバル戦略(Good for You戦略)の一環だ。バランスのよい食生活を促すため、製品とコミュニケーションのあり方を定めた。

製品の栄養評価については、「ヘルススターレーティング」を用いて評価した。ヘルススターレーティングとは、オーストラリア政府などが導入した任意の食品ラベル制度だ。脂肪、砂糖、塩分の含有量などをもとに評価した。

さらに、「菓子・アイスクリーム」のカテゴリについては、「1食分のエネルギーを分かりやすく伝える」ことと「子ども向け製品の1食分を110キロカロリー以下とする」というコミットメントを追加した。

こうした戦略を実行することで、栄養改善と売上高の拡大の二兎を狙う。ネスレ日本の原田大輔・マーケティング&コミュニケーションズ本部コーポレートアフェアーズ統括部ウエルネスコミュニケーション室室長は、「地球の持続可能性が問われているが、人の持続可能性も重要な問題である。栄養・健康・ウェルネスに取り組むことで、最終的には社会からの信頼を得られると考えている」と話した。

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナ輪番編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナ輪番編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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キーワード: #健康

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