記事のポイント
- 温室効果ガス(GHG)の濃度は2023年に過去最高になった
- 大気中のCO2濃度は過去20年間で11%増の420ppmとなった
- 世界気象機関(WMO)は地球温暖化の加速への懸念を表明した
世界気象機関(WMO)は10月28日、温室効果ガス(GHG)の濃度が2023年にさらに上昇し、過去最高となり、二酸化炭素(CO2)の濃度は420ppm(ppmは百万分の1)になったと発表した。なかでも大気中のCO2濃度は人類史上、最も速いペースで上昇し、わずか20年で11.4%増えた。気候変動で発生しやすくなった山火事によりCO2排出量が増える一方で、海水の温暖化でCO2吸収量が減少し、WMOが地球温暖化を加速しかねないと懸念を表明した。(オルタナ副編集長=北村佳代子)

(c) World Meteorological Organization
2023年のCO2の濃度は420.0ppmとなり、産業革命前(1750年以前)の水準から51%増加した。2023年後半からのエル・ニーニョ現象と森林火災が、CO2濃度の上昇につながった。
CO2に次ぐ温室効果ガスであるメタンの濃度は1934ppbと、産業革命前から2.65倍となった。メタンはCO2より量は少ないものの、その温室効果は同量のCO2の28倍だ。
亜酸化窒素(N2O)の濃度は336.9ppbと、産業革命前から25%増加した。ここ数十年での大気中の亜酸化窒素の増加は、主に農業の拡大と農業集約化による窒素肥料・糞尿の使用によるものだと指摘されている。
「また新たな記録が生まれた。世界の気温を産業革命前の水準より1.5℃未満の上昇に抑えようというパリ協定の目標達成には明らかに程遠い状況だ」と、WMOのサウロ事務局長は声明を出した。
■「潜在的な悪循環に直面」とWMOが警告
「私たちは潜在的な悪循環に直面している」とWMOのバレット副事務局長は警告する。
「気候変動で発生しやすくなった山火事によって、より多くのCO2が大気中に排出される。その一方で、温暖化した海洋ではCO2の吸収量が減少する。その結果、より多くのCO2が大気中に留まる。地球温暖化を加速させる可能性があり、人類にとって重大な懸念事項だ」(バレット副事務局長)
今回のデータ分析は、CO2排出量の約半分が大気中に残留していることも示した。温室効果ガスは、排出が続く限り、大気中に蓄積し続け、地球の気温上昇をもたらす。 大気中のCO2の寿命は非常に長く、排出量を急速に削減して実質ゼロに抑えても、すでに観測されている気温の水準は数十年にわたって続くことになる、という。