新たに「公正」の観点でも、地球の限界を把握する

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記事のポイント


  1. プラネタリーバウンダリー(PB)は人類が安全に活動できる限界を示す
  2. この概念には気候変動に脆弱な地域への配慮など、「公正」の観点が含まれていない
  3. PBの提唱者は「安全で公正な地球システム境界(ESB)」を新概念を提唱する

SDGsの根拠である概念のひとつにプラネタリーバウンダリー(PB、地球の限界)がある。気候変動、生物多様性の損失など、人類が地球システムに及ぼす9つの影響について、人類が「安全」に活動できる限界を定量的に示す概念だ。23年の評価では6分野で限界を上回った。(新語ウォッチャー=もり ひろし)

だがこの概念は「公正」、つまり平等や社会正義の観点を含んでいない。例えばパリ協定における気温上昇の努力目標値は1.5度以内(産業革命前に比べて)だが、それは地球システムの回復力が維持できる最低限に過ぎない。

「公正」を実現するには、例えば気候変動に脆弱な地域への配慮も必要だ。その限界値は1.0度とされる。

そこで23年5月、PBの提唱者ヨハン・ロックストロームらが論文を発表。「安全で公正な地球システム境界」(ESB)と呼ぶ新概念を提唱した。

新概念では気候変動、生物圏、淡水、化学肥料使用、大気汚染の5分野で「安全」と「公正」双方の限界値を示した。

例えば生物圏の場合、生態系の50~60%の保全が「安全」、人間活動が中心的な地域も含め1平方キロあたり20~25%の保全が「公正」な限界値としている。

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もり ひろし(新語ウォッチャー)

新語ウォッチャー。国語辞典の新項目執筆を中心に活動。代表的な連載に「現代用語の基礎知識」の流行観測欄(2010年版~)など。執筆記事一覧

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キーワード: #SDGs

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