オルタナ総研統合報告書レビュー(36):コンコルディアFG

記事のポイント


  1. コンコルディアFGは、2023年にPBRロジックツリーを開示
  2. 戦略的投資にチャレンジすることで資本コストを上回るROE実現を目指す
  3. PBRは地銀平均0.39倍を上回る0.61倍を達成

コンコルディア・フィナンシャルグループは、東証要請に先だち、2023年にPBRロジックツリーを開示しました。戦略的投資にチャレンジすることで資本コストを上回るROE実現を目指す戦略です。PBRは地銀平均0.39倍を上回る0.61倍を達成しました。(オルタナ総研フェロー=室井 孝之)

コンコルディア・フィナンシャルグループ統合報告書
コンコルディア・フィナンシャルグループ統合報告書

コンコルディアFGは、2016年設立の横浜銀行と東日本銀行を傘下に置く金融持株会社です。2023年には神奈川銀行を連結子会社化しています。

同グループは、統合報告書2024の財務担当取締役メッセージで、「持続的な成長につながる戦略的投資にチャレンジすることで資本コストを上回るROEを実現し、企業価値を向上させる施策として、2023年にPBRロジックツリーを開示しました」と記しています。

これは東京証券取引所が「投資者の視点を踏まえた「資本コストや株価を意識した経営」のポイントと事例」を公表した2024年2⽉以前のことです。

サステナX

同グループ「資本コストや株価を意識した経営」の特徴は、次の3点です。いずれも東証の要請に合致しています。

1点目は、株主資本コストの現状分析です。「CAPM(キャップエム:資本資産価格モデル)」と「株式益利回りに基づく算定値」の二つの指標を用い、「マイナス金利導入後、ROEが資本コストを下回り、PBRは1倍割れで推移」と分析しました。

2点目は、株主資本コスト低減のため、レジリエンスの⾼い事業ポートフォリオの構築や、サステナビリティ経営の⾼度化などに取り組みました。

3点目は、企業価値向上すなわちPBR1倍超に向けた取り組みをPBRロジックツリーを用いて記載し、取り組みと企業価値向上の関係性を明確化しました。RORA(当期利益)改善を軸としたROE(自己資本利益率=純利益/株主資本)引き上げと資本コスト抑制に向けた運営により、企業価値の向上を目指しました。

更には「戦略的IRによる投資家とのエンゲージメント強化」と「ディスクロージャの充実」を図りました。その結果、ESG評価は向上し、MSCIのESGスコアについて国内銀行業界で最高位AA評価を獲得しました。

財務担当取締役は、「ロジックツリーによってさまざまな課題を明確に整理したことで、投資家の皆さまとの対話も、現況や課題、成果において同じ物差しで語れるようになり、非常に建設的になった」と述べています。

本年3月の個人投資家向け会社説明会資料によりますと、「株価純資産倍率(PBR)」は0.61倍で、メガバンク3行平均0.68倍、上場地銀平均0.39倍です。

同資料では、企業価値向上に向けた取り組み・中期経営計画として、 PBRと相関性の高いROE向上へ向け、中期経営計画をはじめとした経営戦略を実行すると記されています。次回の統合報告書では、具体的戦略ならびにKPIを示されてはいかがでしょうか。

muroi

室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

執筆記事一覧
キーワード: #サステナビリティ

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。